どうなる100m決勝。勝つのはサニブラウン?9秒台決着は?
サニブラウンの走りは予想していたものに近かったが、準決勝1組で実現した桐生と小池の“同学年対決”はやや期待外れに終わった。小池がセカンドベストの10秒09(+0.2)でトップ通過を決めた一方で、桐生は小池とのガチンコ勝負を避けるかのように、終盤は力を抜いて、10秒22の2着で通過したからだ。準決勝でムキになる必要はないが、桐生の走りに、過去3回の日本選手権の決勝(3位、4位、3位)を思い出させるような後味の悪さを感じたのは筆者だけではないだろう。 小池は、「予選で余計な力を使った部分を準決勝で修正することができました。準決勝で今日できるベストを尽くすことで、明日はもう少し身体のキレが上がると想定しているので、プラン通りです」とビルドアップ的に上げていき、決勝にピークを合わせている。 一方の桐生は、「70mくらいから追うのをやめて、横を確認しながら走りました。200mだと良いレーンをとらないといけないですけど、100mは関係ない。昨年までは1着で通りたいと気疲れする部分もあったので、通ればいいかな」と話していた。 翌日の決勝についての向き合い方も、ふたりは対照的だった。小池は、「勝とうと思っても、自分ができることは変わらないので、そのときだせるベストを尽くして、順位はその結果ととらえています。自分のレーンだけを見て、理想のレースをしっかりすることに集中していきたい」と落ち着いていた。 桐生はというと、「速いタイムを出さないと優勝は目指せないので、(タイムも)狙いたい。明日は中盤からもう一段伸びそうなので、そこで勝負していきたいと思います」とコメントした。
決勝では、9秒97のサニブラウンと9秒98の桐生が激突することで、日本人スプリンターの“9秒対決”が初めて実現することになる。なお、男子100m決勝のレーンは以下の通りだ(タイムは準決勝のもの)。 2レーン 坂井隆一郎(関西大)10秒28 3レーン 川上拓也(大阪ガス)10秒24 4レーン サニブラウン・ハキーム(フロリダ大)10秒05 5レーン 桐生祥秀(日本生命)10秒22 6レーン 小池祐貴(住友電工)10秒09 7レーン ケンブリッジ飛鳥(Nike)10秒20 8レーン 多田修平(住友電工)10秒21 9レーン 飯塚翔太(ミズノ)10秒27 注目の3人は4~6レーンに入った。“史上最高の戦い”になるかは、サニブラウンと小池に挟まれた桐生がカギを握っている。3人はドーハ世界選手権の参加標準記録(10秒10)を突破しているため、日本選手権の優勝で即時代表内定となる。残り枠は、(1)9月16日時点での世界ランキング上位者、(2)参加標準記録を満たしたアジア選手権の優勝者、(3)参加標準記録を満たした強化委員会推薦者、(4)アジア選手権優勝者で強化委員会推薦者、の順で選ばれる。 桐生は現時点の世界ランキングで日本人最高位(11位)につけているだけでなく、アジア選手権の優勝者。ドーハ世界選手権の日本代表に最も近い位置にいる。単にドーハ世界選手権のキップを獲得するだけなら、日本選手権のタイトルは必要不可欠というわけではない。 準決勝の走りを見る限り、サニブラウンが実力的に抜けて出ており、小池が2番手。3位以下は大混戦になりそうだ。そのなかで、桐生だけはまだ余力を残している。前日本記録保持者が5年ぶりの優勝に貪欲になることができるのか。3学年下のサニブラウンと同学年の小池。急上昇中のふたりを相手に桐生が“最高の走り“で応戦することができ れば、日本陸上界にとって、伝説のレースになるだろう。 「日本人最速」が決まる男子100m決勝は、本日28日の午後8時30分に行われる。 (文責・酒井政人/スポーツライター)