第5R、打たれてダウンする田中（左）＝有明アリーナ（撮影・今野顕）

プロボクシング興行「Prime　Video　Presents　Live　Boxing10」（14日、東京・有明アリーナ）2日間にわたる国内史上最大級の興行の最終日。WBO世界スーパーフライ級王者の田中恒成（29）＝畑中＝は挑戦者で同級5位のプメレレ・カフ（29）＝南アフリカ＝に1－2の判定で敗れ、初防衛に失敗。王座から陥落した。 3カ月遅れの仕切り直しの初防衛戦。スーパーフライ級王者として4団体統一への第一歩を踏み出すはずだった田中は、呆然（ぼうぜん）としてリングを後にした。 「判定に納得がいっていないということはない。ただ、ここで負けている自分には悔しさしかない」 試合後は相手と抱き合い、腕を上げるなど、明るく毅然（きぜん）と振る舞いながらも、言葉に無念の思いがにじんだ。 1回は鍛え上げてきたスピードで相手のパンチを完璧にかわしてみせた。だが、2回以降、少しずつ打たれる場面が増え、5回にはカウンターの右フックでダウンを奪われた。その後は相手との距離を詰め、ボディーを軸に反撃に転じ、最終12回は猛烈なラッシュを仕掛けたが、KOには至らず、前半に失ったポイントの差で競り負けた。ジャッジの判定は3者いずれも1ポイント差と僅差だった。 今年2月に世界最速となるプロ21戦目での4階級制覇を達成。本来なら7月に初防衛戦を行うはずだったが、対戦相手の減量失敗で試合前日に中止になった。モチベーションを落とすことなく、1週間後には練習を再開。その目は、4団体統一という目標だけを見すえてきた。 それだけに、まさかの敗戦。今後については「ちょっとわからない。（リベンジは）僕が言う言葉ではない」と多くを語らなかったが、まだ29歳。強い姿を再びリングの上で見せるはずだ。（月僧正弥） ■田中　恒成（たなか・こうせい）　1995（平成7）年6月15日生まれ、29歳。岐阜・多治見市出身。岐阜・中京高時代に高校4冠。2013年11月にプロデビュー。15年5月にWBO世界ミニマム級王座を日本選手最速の5戦目で獲得し、16年12月にWBO世界ライトフライ級、18年9月にWBO世界フライ級、24年2月にWBOスーパーフライ級王座を獲得して4階級制覇。兄の亮明は東京五輪フライ級銅メダル。プロ戦績は22戦20勝（11KO）2敗。右ボクサーファイター。164センチ。