史上初、入獄した元法務大臣の河井克行氏が見た刑務所の世界 「次は良い大臣になるよ」その言葉の真意とは?
だが、手紙の発信も月に数度という制限があり、便箋も1回につき7枚までと決められている。河井氏自身、受刑中に回数制限で手紙の返信ができないまま、パーキンソン病だった父親を亡くしている。 「これでどうやって社会とのつながりを回復しろと言うのだろう。そんな状態で何年も社会から隔絶されて、更生しろって言われても厳しい。僕は、妻をはじめとして応援してくださる方がいたので頑張ってこられましたが、普通の人には無理でしょう。ある受刑者が言っていましたよ、『刑務所は再犯生産工場ですね』と」 ▽不条理の塊 「図書計算工場」での発見は、他にもある。獄中で資格を取得して社会復帰に生かそうと考える受刑者は多いが、肝心の本がないのだ。 「受刑者から請求が来たら、資格関係の参考書や問題集を貸し出すんです。ところが簿記の問題集を見ると、相当古いし、3冊程度しかない。しかし当時の受刑者は約1400人いました。だから請求に対して、いつも『貸し出し中』と返事を書かざるを得ない。実に心苦しかったですよ。せっかく資格を取ろうと前向きな気持ちになっても、情報が得られないんですから」
また、書籍は注文して購入することができるが、刑務所と契約している書店に注文すると、かなりの確率で「品切れ」だったという。 「単行本は月に6冊を注文できるんですけど、6冊のうち4、5冊は品切れと返答される。つい最近、新聞に広告が載った本でさえね。だから、長くいる受刑者たちはあきらめてますよ。本を借りることも、買うこともできない。友達や家族からの差し入れもない。それで、出所後のことを考えろって言われても、外の情報が皆無で、一体どうやってできるんですか?不条理の塊ですよ」 河井氏が思い出すのは、かつて法務副大臣時代、法務省の官僚から渡された書類に並んでいた「受刑者の心情に寄り添う」「受刑者の心情を理解する」などのうたい文句だ。 「実態は全く違う。入所時に一度、職員との面談があっただけ。その後、心情を聞き取られることなんて全くありませんでした。それに、今の刑務官の人員数では、そんなことを求めても酷ですよ。現場はきっと、本省(法務省)に対して『じゃあ、あんたやってみろよ』と思ってるんじゃないかな」 ▽幸せじゃなかった