アギーレJの連覇に必要な条件
ここまでは日本のポジティブな側面をまとめてきたが、連覇に向けて難問がないわけではない。まず、明日、行われる決勝トーナメント初戦のUAE戦は、相手が中3日の試合であるのに対して、日本は中2日。これには本田圭佑も「リカバリーするのに中2日は短い。賛成しかねる」と大会日程に苦言を呈していた。 先発メンバーが固定されていることも気がかりだ。4年前はケガ人や出場停止が出たことで第3戦では先発3人を入れ替えたが、今回は3戦とも同じ先発メンバー。途中出場する選手の顔ぶれもおおよそパターンが決まっており、3試合で途中出場した選手は清武弘嗣、武藤、豊田陽平、今野泰幸、柴崎岳の5人。23人中ピッチに立ったのは16人にとどまっている。これは3戦で19人が出ていた前回と比べて少ない。 それでも準々決勝のUAE戦は、4-2-3-1のトップ下でプレーする背番号10の左利きMFオマル・アブドゥルラフマンに前を向かせないことや、不用意にボールを失ってカウンターを受けないこと、90分間集中することなどを徹底すれば危ない試合にはならないだろう。 しかし、準決勝以降に対戦が推測される相手は全く別レベルだ。準々決勝で中国を2-0で破ったオーストラリアは、ベテランのケーヒルが2得点。昨年11月の親善試合で対戦したときもそうだったが、ロングボールを多用していた以前のスタイルとはガラリと変わり、パスをつなぐチームへと変貌している。日本としては「正直に言うと、蹴ってこられた方がイヤ」という選手が少なくないのも事実で、日本の弱点を突くという意味で、今回の対戦では、一転、ロングボールを多用してくるかもしれない。 決勝で対戦する可能性の高い韓国も、この日、ウズベキスタンを2-0で下した。右足骨折のイ・チョンヨン(ボルトン)と右ひじ靱帯断裂のク・ジャチョル(マインツ)が離脱してるほか、風邪を引いて体調を崩していた選手もいるなど、離脱者が続出しているが、対日本となると別の戦いになるのが韓国の伝統。吉田麻也は「韓国対オーストラリアの試合を見たが、両方とも突破が決まっているわりには激しいと感じた。オーストラリアは前からプレスを掛けるチームに変わっている。韓国はしっかりとした技術があって能力の高い選手がおり、ハードワークを惜しまないチーム」と警戒を強めている。 とはいえ、今回の日本の実力は「アジア無双の強豪」となって然るべきものである。そのために何が必要かを分かっているのも選手だ。 川島永嗣は、「ここからは途中から出る選手の役割というのが大きくなってくる。疲労は大きくなってくると思うけど、23人全員のコンディションを整えていきたい」と力を込めた。 日本に望まれるのは、攻守のバランスを保つのはもちろんのこと、ザックジャパンとして戦った4年前のようにラッキーボーイが出現することだ。現状では、アギーレジャパンは、練習から先発組とサブ組を完全に分けており、まだ試合に出ていない選手の中は「試合カンが心配だ」と不安を口にする者もいる。 残り3試合。アギーレ監督には、選手のモチベーション管理も求められてくる。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)