佐渡裕がトーンキュンストラー管の音楽監督退任 アップルミュージック音声ガイド案内人
「来年6月に第8番を演奏します。再来年にはマーラーの交響曲全集がリリースされる予定です。難解な第7番ですが、トーンキュンストラー管のいいところが出ています。ブラスセクションが何ともいえない一体感があります。皆ウィーンで勉強をしているからです。年とともに音楽は変わっていきますが、今では演奏していて本当にハッピーなのかなどオーケストラがどう感じているのか、手に取るように分かるようになりました。ものすごく気持ちのいいオーケストラです」
■退任前に日本ツアー
6月のマーラーの交響曲第8番は「千人の交響曲」と呼ばれる大曲。歌手8人に合唱団、児童合唱団を必要とする。佐渡とは2016年に初の日本ツアーを行っており、退任コンサートの前の5月、3度目の日本ツアーを行う。
佐渡は京都市生まれ。母親が家でピアノや歌を教え、兄とともにピアノを習っていた。クラシック少年だった佐渡は小学校の卒業文集に「ベルリン・フィルの正指揮者になる」という夢を書いた。家にはカラヤンがベルリン・フィルを指揮するレコードがあった。小学校5年生のとき初めてお小遣いで購入したレコードが、バーンスタインが指揮するニューヨークフィルのマーラーの交響曲第1番「巨人」だった。
1月に日本版を開始した「アップルミュージッククラシカル」で佐渡はアーティストアンバサダーを務めている。そして今秋、配信が始まったオリジナル音声ガイド「ストーリー・オブ・クラシカル」は、ルネサンス、バロック、古典派、ロマン派などと時代ごとに解説する。
「今は私の子供時代に比べ10倍以上の音源が簡単に手に入ります。私も楽譜に書いていないテンポなどを勉強するためにネットを使うことがあります。ナレーションは大変でした。知らない王様の名前など間違ってはいけないプレッシャーがありました。学校に肖像画が飾ってある作曲家はなぜ有名なのか、単なる歴史ではなく、彼らに影響を与えた背景や裏話まで分かりやすく解説しています。私がLPを手に入れたように大事なのは音楽との出合いです。さまざまな音楽と出合い、コンサートに来ることにつながってほしい」と話した。
トーンキュンストラー管の来日公演は2025年5月10日、兵庫県立芸術文化センター、18日、東京・すみだトリフォニーホールほか。モーツァルトのピアノ協奏曲第23番、マーラーの交響曲第5番。ピアノは反田恭平。(江原和雄)