防災ヘリ墜落、長野県の救難体制に打撃 多くの隊員とヘリ失う
5日に起きた長野県の消防防災ヘリ墜落事故は、北アルプスなど全国有数の山岳・観光地と広大な県域を持つ長野県の今後の救難・防災活動に打撃を与えています。訓練された多くの隊員と、山火事などにも対応できたヘリコプター「アルプス」のそろっての喪失で救難・防災対策の再構築は急務に。県は近隣県への支援要請などを含め厳しい対応策の検討が迫られます。 【関連】長野の防災ヘリ墜落、搭乗9人全員が死亡 離陸10数分後にトラブルか
全国有数の山岳地帯と広い県域
長野県の救難・防災ヘリの態勢は、長野県警の「やまびこ1号」と「やまびこ2号」、今回墜落した県の「アルプス」の合わせて3機。救難以外では医療関係で県のドクターヘリ2機が松本市と佐久市を拠点に活動しています。 県の消防防災航空センターで運航してきた「アルプス」は、全国でも秋田、高知、岐阜各県と並んで4県が「自前」でパイロットやヘリなどすべてを賄う「自主運航」。運航を民間委託する自治体が多いなかで、防災ヘリの活動は長野県でも重視されてきました。 今回の墜落事故で死亡した搭乗員は、県の消防防災航空センターに属するパイロット1人、整備士1人、消防隊員7人。同センターはパイロット3人、整備士3人、隊員8人を抱えていましたが、そのうち隊員のほとんど、数少ないパイロットと整備士も2人失い、訓練によって高い技術を持っていたスタッフの多くがいなくなりました。唯一のヘリも失くし、同センターは機能しない状態です。
2016年の「アルプス」の出動件数は、山岳などでの救助活動87件、山火事への散水などの火災防御12件、大雪などでの災害応急11件など111件に上り、ほぼ3日に1回の頻度。救助は前年比14件増えています。八ヶ岳連峰や奥穂高、北アルプスなど山岳での救助や捜索のほか、大雪や豪雨による孤立地域への物資補給、御嶽山噴火や土砂災害などの調査も行っています。こうした活動では県警と連携することもあり、長野県の救難・防災体制の要でした。 長野県は北海道、岩手県、福島県に次ぎ全国で4番目の広い県域(約13500平方キロメートル)を持ち、春以降は乾燥による山火事、夏は山岳遭難なども多発。県警と県の3機のヘリはフル稼働することも。このため今回の事故で人員とヘリを失った影響は深刻です。 県はまだ具体策を示していませんが、救難・防災対策の後退を防ぐために隣接県との協定に基づくヘリ出動支援の要請や、民間ヘリへの委託なども検討課題になると見られています。