思春期の子どもたちが起こす社会的に好ましくない行動…「非社会的行動」と「反社会的行動」の違い
日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。人生には、さまざまな困難が待ち受けています。 【写真】じつはこんなに高い…「うつ」になる「65歳以上の高齢者」の「衝撃の割合」 『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説しています。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、本書では逆に高齢者の側からたどっています。 本記事では、せっかくの人生を気分よく過ごすためにはどうすればよいのか、『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)の内容を抜粋、編集して紹介します。
非社会的行動と反社会的行動
思春期には身体の成長で、それまでになかった体力が身につく一方で、精神面での不安定さがあり、良好な環境にないと、健全な社会的行動から逸脱する危険性があります。親からの独立、自我の芽生え、大人社会への反抗、厳しい生活からの逃避、大人になることへの抵抗、逆に大人びた生活への憧れ、同世代への嫌悪や軽蔑など、さまざまな要因で社会的に好ましくない行動に出ます。 逸脱行為には、非社会的行動と、反社会的行動があります。 非社会的行動は、好ましくはないけれど、他人や社会に迷惑をかけないもので、不登校やひきこもり、摂食障害、自傷行為、家出、夜間徘徊、喫煙、飲酒、自殺などがあります。 摂食障害は拒食症と過食症で、過食症でも食後に意図的に嘔吐するので、拒食症と同じくやせている場合があります。容姿を気にする女性に多く、重症の場合は命に関わります。 自傷行為はリストカットや煙草の火の押しつけ以外に、自分を殴る、壁に頭を打ちつける、治りかけた傷をほじくって悪化させる、ピアスの穴を多く開けるとか、髪の毛を抜く「抜毛症」などもあります。 反社会的行動とは、他人や社会に迷惑をかけるもので、暴力、窃盗、落書き、器物損壊、危険運転(暴走族への参加)、薬物依存、痴漢、のぞき行為、ストーカー行為、売春などです。 薬物依存はシンナー遊びや大麻、覚醒剤の使用などで、非社会的行動のようにも見えますが、結果として社会に迷惑をかけたり、購入資金を得るために窃盗や強盗をするなどの反社会性があります。 うそや怠学、同級生や友人に対するイジメ、意地悪、両親や教師に対する反抗、暴言、暴力なども程度の差はあれ、社会的に好ましくない行動とみなされます。 これらの背景には、思春期特有の不安定さや未熟さもありますが、家庭環境と成育過程の影響も小さくありません。高圧的な躾、過度な期待、過保護、甘やかし、無関心など、不適切な子育てがあった場合、思春期に逸脱行為を引き起こす可能性が高いとされます。 不適切な子育てをする親は、自分たちも好ましくない育てられ方をしたケースが多く、不適切養育の世代間連鎖といわれます。思春期の逸脱行為には根の深い原因が潜んでいることが多いので、対応には家庭と学校だけでなく、専門家や施設、警察との連携も必要になります。 さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。
久坂部 羊(医師・作家)