「自分の立ち位置は雪原じゃないかもしれない」萩原聖人、居酒屋での出会いで感じた熱狂の手応え「Mリーグが国民的なエンタメになりつつある」/麻雀・Mリーグ
7年目を迎えるプロ麻雀リーグ「Mリーグ」。TEAM雷電・萩原聖人(連盟)は、その熱狂の広がりを肌で実感している。フラリと入った居酒屋で「麻雀すげえじゃん」と思う出来事があったそうだ。「Mリーグが国民的なエンタメになりつつある」と語る萩原。「雪原の求道者」とも呼ばれ必死に戦ってきたが、そんな男に心温まるシーンが訪れ、心境にも変化が出た。今期もどこまでもファンを喜ばせることに重きを置き“面白い麻雀”にこだわっていく。 【映像】俳優?ボクサー?萩原聖人、試合前の厳しい表情 ―昨シーズンについて振り返りを。 萩原聖人(以下、萩原) 僕自身については、内容については一番いいシーズンだったと思っています。結果がついてきていないので自分でこういうことを言うのはおこがましいですが、一牌の後先だけだという勝負局が多かった。負けてもいいというわけではないですが、勝たなければいけないという気持ちではなかった。この手をどうしようというベストの選択が一番できたシーズンだったんじゃないかなと思っています。 ―脱力麻雀がイメージできたか。 萩原 自然体というのかな、あえて力を抜くというよりかは、その日の自分の体調だったり機嫌だったりでメンタルがブレるということが全くなくなった。年齢を重ねてきたというのもありますが、麻雀に対する向き合い方が変わってきた。「麻雀ってこういうゲームだよね」ということが自然にわかってきました。麻雀にいろいろ教えてもらっています。「お前の思っていた理想はこうかもしれないけど、実際はこういうこともあるよ」というか。いくら塩だけ入れても料理はうまくならねえんだよ、みたいな(笑)。 負け惜しみではなく全てが全力だった。同じ5万点トップでも、みんなの記憶に残るような麻雀を打ちたい。あの時のあの局、とファンが話題にしてくれた時にあそこに萩原聖人がいたよね、というような演者でありたいなと思います。 ―明らかに昨年から戦い方が変わってきた。コメント欄を見ても反響が違ってきた。 萩原 それは嬉しいですね。自分のために打つのか、ファンのために打つのか、両方なのか、そこの線引きが僕は割とはっきりしていて、自分が勝っても、見ている人が喜んでなければやっている意味がない。みんなが喜ぶ一打を打ちたい。綺麗事のようかもしれませんが、そういうところを大事にして俺は6年間やってきた。 いろんな声があって思うところもたくさんあるんですが(笑)、自分が何を選択するか決めるのは自分ですから。月曜日から金曜日までみんなが楽しみにしてくれているMリーグの時間を最高に楽しいものにするために自分がいるだけという話です。選手全員がプロだから、みんなそれぞれいろんな考えがあって、だから面白いという考え方もあります。いつ辞めてもおかしくないような成績が続いていても背中を押してくれる、応援してくれるユニバースを始めとするファンが、自分を成長させてくれる。 自分が勝つためにこう変わってきたというのではなく、自然に変わってきた。それを証明できるような今シーズンにしたいなと思います。見てくれる人がいなければ、麻雀をやっていてどんなドラマを作ろうが興行として成立しない。ただの自己満足になってしまう。それだけは嫌だと思っています。Mリーガーでいられる間ではみんなの心に残るものを残したいですね。 ―ユニバースが願うのはチームがこのまま残ること。 萩原 そんなに世の中は思うように行かない。縁起が悪い話ですが、もしセミファイナルへ行けなかったとしたら(選手入れ替えの)レギュレーションに引っかかりますが、そうなった時に「あれをやらなかったからこうなった」という後悔だけはしたくない。4人とも必死に戦っていますから。その必死さや表現の仕方はそれぞれ違うというだけ。 チームメイトは異常なくらいいい人たちで、俺だけ性格悪いんじゃないかと思うくらい(笑)。家族というほどべったりはしていませんが、勝負の世界に向いていないんじゃないかなと思います(笑)。永遠はないのでいつかは終わりが来るのですが、いろいろやってきた自負もある。 たまたまフラッと入った下北沢の居酒屋で、店長さんが「夫婦揃って、ユニバースです」と言ってくださった。「ユニバースというワードがもう勝ちじゃん」と思った(笑)。そういうことを僕は今までドライに俯瞰して見ていたのですが、Mリーグが「麻雀=ギャンブル」というイメージを、「麻雀=Mリーグ」に変えてくれたと思えた。そういうことが実感できた。数字だけ聞かされるよりもユニバースという言葉を僕が発信して、そういうように浸透していった。「麻雀すげえじゃん」みたいな。 その店長さんが、5歳くらいのお子さんの動画を見せてくれて「雷電の麻雀は面白いんです!」とやっているんです。でもお店にはBEASTのポスターが貼ってありましたけど(笑)。 ほかにも俳優業で「映画を見ました」とか「ドラマを見ました」ではなくて「ユニバースなんです」と言ってきた方がいた。麻雀や雷電を通じてファンになってくれたというのはもう麻雀の力です。僕の力ではないです。それに感謝しながら今シーズンをやりたいなと思います。 毎年「勝負の年」と言い続けています。勝ち負けではなくMリーグの存続ですね。そんな中で、麻雀というものが持っている魅力や可能性を改めて感じる出来事でした。僕も含めて選手たちは麻雀に負けてはいけない。僕らは麻雀にこんなに助けられた、こんなに生かされている、そういうことなんだろうなと思います。 ―ユニバースに「一緒に泣こうぜ」ということを言ってきた。 萩原 僕は本当にMリーグが一番盛り上がるのは雷電が優勝することだと思っています。まずは一番盛り上げたいなと思っています。素直ではないんです僕は。(「優勝したい」と)ストレートに言う美しさもあるのですが、ひねくれた気持ちというのを少しあって、インタビューでもなかなか…本音はしゃべっていますが、本音の分かりやすい部分を分かりやすく喋りたくない。自分なりの表現方法で伝えたいなという気持ちがいつもあります。今年が一番素直かもしれませんね。 自分が背負っている十字架の重さみたいなものを決めつけてやってきましたが、それはもうないかもしれない。本当に今年は自分が麻雀を楽しむように、ファンを楽しませる。それに尽きます。Mリーガーになっていない人生があったかもしれませんが、それに比べて今の方が間違いなく幸せで豊かでいい人生です。負けても、負けても、たまに勝って、それでもまた負けてもまた見たいと言ってくれる。誹謗中傷みたいな声はなくなったんですよ。これはもうすごい進歩。ユニバースもすごく成長してくれているんだなと思います。ファンにもいろんな人がいますが「本当は好きなんじゃん」と(笑)。麻雀というゲームに関わっていると冷めるということはできない。Mリーガー人生があとどれくらいあるか分かりませんが、自分の立ち位置は雪原じゃないのかもしれない。自分が自分なりに種をまいてきてお水をあげてしっかり今咲こうとしている。 ―改めてMリーグの熱狂は今どう感じているか。 萩原 スポンサーの数も増えているし、変わってきているとは思います。プロ野球は飽きられないじゃないですか。分母は敵わないですが、Mリーグが国民的なエンタメになりつつあるとは思います。麻雀の面白ささえ知ってもらえれば結構ハマるよと。それが本質なんじゃないかなと思います。日本人が好きになるゲームだなと思います。毎年もっと大きな渦を起こしたいということは悩みます。最近はよく麻雀店へゲストに行くようにしているのですが、スマホで見るだけではなく、実際に会うということが大事。麻雀店には40、50人しか入りませんが本物の自分を見せてあげたい。一緒に麻雀を打ってちょっとおしゃべりする。「なぜMリーグの熱が上がってきたか?」ということを、みんながちゃんと精査して、さらに考えていかなければいけないと思います。 ◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズン各96試合(全216試合)を戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。各チーム20試合(全30試合)を戦い、さらに上位4チームがファイナルシリーズ(16試合)に進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。 (ABEMA/麻雀チャンネルより)
ABEMA TIMES編集部