身近な野菜の”毒”も楽観視してはいけない? 野菜は大丈夫でも、エキスを濃縮したサプリには注意!
「お茶で血圧が下がるなら薬を飲む前に試してみようか」「健康食品でダイエットできるならそれがいちばん楽でしょう」「食生活が不規則だからビタミンやミネラルで補うしかない」などと、健康食品はすっかりわれわれの生活に浸透している。 「みるみる痩せる」は“死”に向かっているのと同じ! 危険すぎるダイエットサプリ しかし実は、健康食品では機能性や安全性について何の保証もない健康食品が多く販売され、健康被害の大半はこれらの製品で発生している。ならばどんな健康食品を使えばいいか、使いたければ自身で見分ける目が必要である。そのため健康食品で被害に遭わないための基礎知識をさまざまな事例を通してわかりやすく解説した著書『健康食品で死んではいけない』より、健康食品の素材がなぜ毒に変わるのか連載形式で紹介する。
身近な野菜にも発がん性物質が含まれている
厚労省が毎年発表している食中毒統計の最後のほうに「有毒植物による食中毒発生状況」という欄がある。そこには過去10年間における野菜などの誤食により発生した食中毒の植物の一覧表が掲載されている。 例をあげると、ジャガイモ、イヌサフラン、スイセン、チョウセンアサガオ、バイケイソウ、ハシリドコロ、クワズイモ、スノーフレーク、観賞用ヒョウタン、タガラシ、ユウガオ、ヒガンバナなどの植物名である。 ジャガイモの芽と陽に当たって青く変色した部分には有毒物質が含まれ、食中毒が毎年報告されている。その他の植物は、庭や野にあるどちらかと言えば観賞向きの植物なので、それらを食べる人が本当にいるの?と疑いたくなる。ところが厚労省のホームページには「自然毒のリスクプロファイル」という記事も掲載されており、私でもひょっとすると間違えるかもしれないと感ずる。 ここ10年の一覧表によると、イヌサフランの誤食では13人が死亡している。実はイヌサフランの葉はギョウジャニンニクに、球根はタマネギと混同されやすい。同じく死者を出しているスイセンはその葉がよくニラと間違えられるようである。 自分はそのような間違いはしないと思うかもしれないが、なぜ事故が起こるのか、少し考えてみよう。われわれが通常食べているワラビや白インゲン豆も実は生で食べたら、とんでもないことになる。生のワラビには発がん性物質プタキロサイドが、白インゲン豆にはひどい嘔吐や下痢を発症するレクチンが含まれている。ところがプタキロサイドはワラビをあく抜きする際に消失し、レクチンは加熱で失活するので食べても問題がない状態になる。 身近な食品でも結構作用の強い有毒物質を含んでいるのである。これはわれわれが食品としている対象物が同じ「生き物」である、ということから考察すればしごく当然なこととわかる。なぜなら「生き物」は他の生物の餌になるために生きているのではない。動物なら他の生物に喰われそうになったときには、逃げる、または反撃をすることができる。だが、植物はそれができないので毒を使うのである。 そうした毒素の一部は、量によっては人間の病的な状態を変えることもある。洋の東西を問わず、多くの薬物は植物の成分から発見されている。薬という漢字を草冠に楽と書くのはこのようなところに源を発している。