小池栄子の攻めた七変化も…『新宿野戦病院』は“クドカンなのに”“面白いのに”なぜ視聴率が悪いのか
■先行配信サービスでリアタイ勢が離れたか
FODのサービスの1つに先行独占配信サービスがある。一部の作品は地上波よりも早く最新話が視聴できるのだ(有料会員のみ)。 「『新宿野戦病院』もこれまで1週先の話が、まるごと先行配信されていました。 ただ、第10話の放送後に先行配信された最終話(9月11日放送分)は、《クライマックスを最高のクオリティーでお届けするため少々お時間を頂いております》と添えられて、冒頭15分と一部シーンだけの公開でした。完全版の配信は当日までお預けのため、リアルタイムの数字に影響を与えるかもしれませんね」(前出の制作会社関係者) フジテレビは、FODの有料会員数(FODプレミアム、FODチャンネルfor Prime Video、フジテレビONE・TWO・NEXTsmart、FODポイントコースの総計)が、8月に150万人を突破したと発表している。22年11月に100万人を突破してから、約1年9カ月で50万人増加したということだ。 「『新宿野戦病院』の続きが見たくて、『FOD』に加入したという人もいるでしょう。1週先の先行配信は、リアルタイムの視聴者が減りかねない、諸刃の剣なサービスと言えそうですが、フジテレビとしては自社で運営するサービスなのでダイレクトな収益につながる。そういう面では、リアルタイムの数字が悪くても、局にとってはプラスになっていると言えるのかもしれません。 もちろん、地上波のCMスポンサー企業との兼ね合いはあるでしょうが……」(前同) しかし、『新宿野戦病院』のリアルタイムの数字が良くないのはすべてFODの先行配信のためではないだろう。 「初回のみ視聴率が良くて、第2話から一気に落ちている。考えられるのは、“クドカン脚本”に興味を持って1話だけ観て、視聴するのを止めてしまった、という人が多かったのではないかと。特に、小池さん演じる主人公・ヨウコの英語と岡山弁を混ぜた独特の言葉遣いは、初回から“聞き取りにくい”という声が多かったですよね」(同) 『新宿野戦病院』での小池の英語には、 《小池栄子の英語の発音でゲンナリ。見るに耐えない》 《やっぱり、だめだめ、小池栄子さんの英語の発音、セリフのイントネーションが酷すぎて離脱しそう》 《初回。結構好きな俳優ばかり出てるんだが、なぜかあんまり面白くなかった。アメリカで軍医してたという設定が嘘っぽいのかな…英語の発音とか。みんな頑張ってるのに寒い空気が流れてる(私の中で)》 といった声が、多く寄せられていた。 『新宿野戦病院』について、これまで数多くのエンタメ作品を観てきたドラマライター・ヤマカワ氏はこう分析する。 「”コメディ”のクドカン脚本と、”ヒューマンドラマ”や”お仕事ドラマ”を手掛けてきた、3人の演出家との相性の悪さにも原因がありそうです。 次々と登場して悪目立ちするサブキャラたち、あれこれとエピソードに組み込まれる社会問題など、クドカン脚本ならではの“ハチャメチャな渋滞”を交通整理できないまま、テンポ悪く1、2話と進んでしまったため、物語の本筋がなかなか見えてこず、少なくない視聴者が序盤で離脱してしまったと考えられます。フジテレビにはコメディドラマに手練れのスタッフがいるはずなのに、どうして起用できなかったのか不思議です」 視聴者からも《なんか違和感あるので、フジよりTBS演出で観たい》といった声が出ていた『新宿野戦病院』。少々残念な視聴率はともかく、面白い最終回で有終の美を飾ってほしい。
ドラマライター・ヤマカワ