ディズニー社が「消さないと訴える」学校プール底に描かれた“ミッキー”削除要求…日本の小学生にトラウマ与えた「都市伝説」の真実
やっぱり合法だ!
否である。もし、このミッキーマウスの絵が、本当にただのプール施設の装飾だったとしたら、著作権侵害の可能性を否定はできないだろう。しかし、この絵は単なる装飾目的で描かれたものではなかった。 ジャーナリストの安藤健二は、著書『封印されたミッキーマウス』で、卒業制作を指導した当時の担任教師に取材を敢行している。そこでこの教師は、ミッキーマウスの絵を描いた背景をこう証言したのだ。 「卒業制作に何ができるかを考えたときに、学校に残る下級生の役に立つものにしようということになりました。〔…〕ただ、卒業制作でプールにペンキを塗るだけではあまりに寂しい。そこでミッキーとミニーの絵を描くことにしたんです。低学年用のプールは、子供たちを水に慣れさせるのが主目的なんです。底にキャラクターの絵が描いてあれば、授業で『ミッキーの鼻に触っておいで』と言えば、いい目印になるんです」*4 *4 安藤健二『封印されたミッキーマウス 美少女ゲームから核兵器まで 抹殺された12のエピソード』(洋泉社)2008年 p. 136 これが何を意味するかお分かりだろう。あのミッキーマウスの絵は、描くこと自体が卒業制作という「授業の過程における利用に供されることを目的」としていたことはもちろん、その絵を在校生のために残したこともまた、低学年の体育の「授業の過程における利用に供されることを目的」としていたのである。 無許可の複製が合法になる条件を十分に満たしていると、その正当性を客観的に説明できるではないか。それを、さも当然に違法であるかのように丸め込み、いたいけな小学生の心に傷を負わせたのは、夢と魔法のディズニー王国だったのである。まったく、夢も希望もない話だ。こうなったらもう、米国中の小学校を監視して、ポケモンやハローキティのイラストを全部塗り潰してやらないと気が済まないぞ。
友利昴