誤審を防ぐVARの導入はW杯サッカーをどう変えたか?
ベスト8が出そろったワールドカップ・ロシア大会で、ゴールに関する2つの大会新記録が生まれている。ひとつは開幕戦から36試合連続で、どちらかのチームがゴールを決めたことだ。従来の記録は1954年スイス大会の26試合連続で、実に64年ぶりに更新されたことになる。 今大会の通算37試合目、フランス代表とデンマーク代表のグループC最終戦が、グループリーグ終了時で唯一のスコアレスドローとなっている。もっとも、前者はすでに決勝トーナメント進出を決め、後者も引き分けで2位が決まる状況での対戦だったこともあり、まるで申し合わせたかのように無気力な試合展開となった。 もうひとつはグループリーグ終了時で24回を数えたPK判定数(失敗した場合も含む)。従来の記録は1990年イタリア、1998年フランス、そして2002年日韓共催の3大会における18回だった。2010年南アフリカ大会が15回、前回ブラジル大会が13回と減少傾向にあっただけに、驚異的なペースで増えていることがわかる。これらの新記録は、ロシア大会で初めて導入されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)を抜きには語れない。VARとは試合中で主審や副審が見逃した事態を、リプレー映像を見ながら確認したうえで改めて判定を下すシステムだ。 ただ、ピッチ上のすべてのプレーが対象となるのではなく、ロシア大会では(1)ゴール及びゴールにつながる攻撃(2)PK判定及びPKにつながる攻撃(3)一発退場(4)処分対象の選手が間違っている場合――の4つに限定されている。 ロシア大会では首都モスクワに置かれたオペレーションルームで、決勝トーナメントを含めた全64試合をモニターで監視。誤審の可能性があるプレーがあった場合、オペレーションルームから主審に連絡が入り、主審はそれを受け入れるか、ピッチ外に設置されたモニターでチェックする。 審判側からオペレーションルームへ連絡を入れることもできるが、チーム側からのアピールは認められていない。こうしたシステムのもと、24回のPK判定のうちVAR判定によって与えられたケースが7回を数えた。一方でVAR判定のもとでPKが取り消されたケースも2つを数え、そのうちひとつは西野ジャパンにも大きな影響を与えた。