日本で例を見ない巨大な「政治祭典」 暗殺未遂事件直後のトランプ氏は「自己陶酔」【ワシントン報告⑲共和党大会】
米共和党は7月中旬、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで大統領選の党大会を開いた。日本ではあまり例のない巨大な「政治祭典」である。民主党は8月19日から党大会を予定する。正副大統領候補を正式に決め、11月の本選へ機運を高める場と位置付けられる。共和党大会は暗殺未遂に遭ったトランプ前大統領礼賛一色となった。(共同通信ワシントン支局長 堀越豊裕) 【写真】銃撃され負傷、警護隊に囲まれ降壇しながら拳をあげるトランプ前米大統領
▽「全体の大統領になる」 両党とも4日間の日程で、スケジュールはクライマックスとなる大統領候補の受諾演説で締めくくられる。星条旗をイメージした赤や青の光があふれる会場で、トランプ氏は数千人の党関係者を前に「米国の半分ではなく、全体の大統領になる」と訴えた。 日ごろと趣を異にする言葉からは、暗殺未遂に屈しない自分こそ大統領にふさわしいという自己陶酔が見て取れた。演説後半はいつも通りの政敵批判を交えた時事漫談に戻り、当初55分間の予定は1時間半近くに延びた。負傷した右耳を覆う白いガーゼが目立つ。初日から連日会場に現れ、代議員らを沸かせた。 会場の多目的施設「ファイサーブ・フォーラム」はプロバスケットボールの本拠地としても知られ、約1万7千人を収容できる。期間中、ビール醸造の街として知られるミルウォーキーには党やメディアの関係者ら5万人が集い、経済効果は2億ドル(約310億円)以上と見込まれた。
暗殺未遂もあって周辺の警備は厳重だった。メディア関係者は事前に記者証を申請し、大統領警護隊(シークレットサービス)の審査を経て許可が下りる。会場や、メディアセンターが設けられた会議施設などがある区画約1キロ四方は封鎖され、入る際には厳重な身体・荷物検査が求められた。 ▽2年間の準備 共和党が会場をウィスコンシン州にしたのは、選挙結果を左右する重要州であるからにほかならない。トランプ前政権で大統領首席補佐官を務めたプリーバス氏は大会で「州とミルウォーキーは開催まで2年間の準備を重ねてきた。携わった全員に感謝したい」と振り返った。 2400人を超える代議員が指名候補を正式に決める。参加は名誉なことのようだ。南部テキサス州の代議員ジャクソン・カーペンターさんは「今回が初めての出席。全米の党員と出会い、大統領選に関与できるのは素晴らしい経験」と語った。予備選ではヘイリー元国連大使に投票したが、今はトランプ氏を支持する。トランプ氏の評価が人によって分かれる点も理解する。「(心理状態を探る)ロールシャッハ・テストのような存在で、トランプ氏に希望や夢を抱ける人たちが支持している」と自分なりに解説した。