多発のイネカメムシ 再発生の謎を追う 「薬剤散布したのになぜ」
耐性発達、暖冬も影響
「一部の地域では、エチプロール水和剤で、イネカメムシに対する感受性が低下している事例が生じている」 愛知県が7月17日に発表した同害虫の注意報の中に、そんな記述があるのを見つけた。 より詳しい内容を探るため、同県農業総合試験場に取材した。感受性低下を招いた要因として、同試験場は「薬剤を地域単位で毎年連用したことで、その耐性を持ったイネカメムシが増えた可能性が高い」(病害虫防除室)とみる。 突然変異などで耐性を持つ個体が生まれ、世代交代を繰り返すことで感受性が低下することは珍しくない。 同試験場は「薬剤の連用によって、耐性を持つイネカメムシは毎年一定数発生する」とした上で、「出穂した稲を追いかけて移動するので、先々で薬剤を浴びる。それでも生き残った強い虫が繁殖することで、他の斑点米カメムシよりも短い時間で耐性を持つ虫が増えているのではないか」と推測する。 今回、薬剤散布後も発生していると情報を寄せた3人の地元の県の研究機関によると、薬剤感受性の検証や、特定の薬剤の連用も確認されていなかった。 だが、埼玉県病害虫防除所は「防除体系によって効きにくい薬剤が出てくる可能性はある」と指摘。「今後データを集めていきたい」との考えを示した。
捕食されにくく
もう一つ、記者が気になったのが昨年の暖冬の影響だ。越冬数が増えていることが薬剤散布後の再発生に結び付いているかどうかも調べた。 埼玉県病害虫防除所に尋ねると、「越冬数が多いと、防除しても外から水田に飛来してくる数も多くなることがある」との回答を得た。 同防除所が7月8日に発表した同害虫の注意報によると、予察灯の誘殺数は同月3日時点で122頭。多発した昨年を既に超えており、今年の発生数の多さを指摘している。 暖冬に加えて、同防除所は、カメムシ類の中でも大型であるため「他の虫に捕食されにくいことで、生息数がさらに増えている可能性がある」とみる。