多発のイネカメムシ 再発生の謎を追う 「薬剤散布したのになぜ」
イネカメムシが水稲の出穂前に多数飛来してきたことを報じた本紙「農家の特報班」の記事を受け、複数の読者から発生動向の情報が寄せられた。詳しく状況を聞くことができた読者の情報を分析すると、通常の斑点米カメムシ類には見られないある共通点が見えてきた。 【表で見る】投稿者から寄せられた情報一覧 薬剤を散布したのに再び発生しているーー。調査のきっかけは埼玉県加須市の男性からのメッセージだった。 男性は出穂直後の7月7日、自身の水田で同害虫を見つけ、ドローンで水和剤を散布した。さらに、その2日後に再び多数の同害虫を確認。「弱っているものもいたが、元気に逃げ回るものもいた」と当時の状況を話す。 この男性以外からも同様の情報が複数寄せられた。兵庫県市川町の男性は、出穂後の16日に、自身の水田で同害虫を見つけて、水和剤を散布したが2日後に確認したという。25日に再度散布するも、直後にまた見つかった。「さらに追加防除をすべきかどうか悩んでいる」と打ち明ける。 群馬県館林市の男性は出穂前にもかかわらず自身の水田で同害虫を多数発見した。発生した場所に粒剤を散布したが「10日が経過してもいなくならなかった」。さらに水和剤を散布し、その2日後に粒剤もまいた。「ひっきりなしに飛来してくる。不稔(ふねん)や斑点米防止のため、少なくともあと数回の散布は覚悟しているが、コストがかかる」と頭を抱える。
従来と違う傾向
いずれの投稿者も、「これまでの斑点米カメムシ類にはない傾向」と口をそろえる。使用した薬剤の使用期限は切れておらず、大雨などで流されたこともなかったという。 農研機構に問い合わせると「イネカメムシに効果がある薬剤ではなかった可能性もある。防除効果に疑問がある場合、地域の防除所などに相談してほしい」(病害虫防除支援技術グループ)との答えが返ってきた。 記者は、イネカメムシに使われる薬剤の効果を把握するため、全国の研究機関がまとめる研究成果などを洗い出した。すると、薬剤散布後の再発生の謎を解き明かすヒントになるような情報を見つけた。