中国自動車「上汽集団」、全固体電池を自社生産へ 技術系スタートアップと手を組み、27年からEVに搭載
中国の国有自動車大手の上海汽車集団(上汽集団)は5月24日、全固体電池の自社生産に向けたロードマップを発表した。2025年に全固体電池の生産ラインを建設し、2026年に量産を開始。同時並行で全固体電池を搭載する新型EV(電気自動車)の走行試験を進め、2027年に発売する。 【写真】上汽集団が開発中の全固体電池。採用する複合電解質の具体的な組成は明かしていない(同社傘下の智己汽車のウェブサイトより) この計画を実現するため、上汽集団は全固体電池の研究開発を手がけるスタートアップ企業、清陶能源(チンタオ・エナジー)とパートナーシップを組む。上汽集団は清陶能源の株主でもある。両社は(全固体電池の事業主体となる)合弁会社の上汽清陶能源科技を2023年11月に設立しており、出資比率は清陶能源が51%、上汽集団が49%となっている。
■次世代電池の本命 全固体電池はEV用の「次世代電池」の本命として、自動車業界の期待を集めている。現在主流のリチウムイオン電池との大きな違いは、電解質に液体ではなく固体を用いることだ。 液体電解質の弱点である液漏れ、発火、破裂などのリスクが低いため、正極と負極にエネルギー密度がより高い材料を用いることで(単位体積当たりの容量を増やし)、EVの航続距離を伸ばすことができる。 しかし解決すべき技術的課題も少なくない。固体電解質は酸化物系、ポリマー系、硫化物系など複数の材料が研究されており、それぞれに長所と短所がある。そんな中、上汽集団と清陶能源はポリマー系と無機系の材料を組み合わせた複合電解質を採用した。
上汽集団の発表によれば、開発中の全固体電池はエネルギー密度が1キログラム当たり400Wh(ワット時)、液体電解質の電池よりも安全性が高く、大規模生産を通じてコストも大幅に下げられるとしている。なお、同社は採用する複合電解質の具体的な組成は明かしていない。 中国政府直属の最高研究機関である中国科学院のメンバー(院士)の欧陽明高氏によれば、ポリマー系の固体電解質の長所は材料が柔らかく、電解質と電極の接触を緊密にできることだ。製造コストも相対的に安い。