スズキ「スイフト」4代目フルハイブリッドは、マイルドハイブリッドより約20万円高い194万円で発売。コスパはどうだ?【今日は何の日?7月12日】
●4代目スイフトのフルハイブリッドはコスパが良くない?
4代目スイフトに設定されている2つのハイブリッドシステムのコストパーフォーマンスを比較してみた。 ・マイルドハイブリッド車ML(1.2L 直4 NAエンジン+2.3kW ISG) 燃費:27.4km/L、車両価格:172.152万円 ・フルハイハイブリッド車SL(1.2L直4 NAエンジン+10kWモーター) 燃費:32.0km/L、車両価格:194.94万円 フルハイブリッドは、マイルドハイブリッドに対して燃費が17%向上、車両価格は22.8万円ほど高い。フルハイブリッドの燃費効果は大きいように見えるが、ガソリン価格160円/L、1年間の走行距離1万kmと仮定すると、マイルドハイブリッドの年間ガソリン代は5万8400円、フルハイブリッドは5万円となり、その差額は8400円/年となる。両モデルの車両価格差22.8万円をガソリン代の差額で挽回しようとすると、27年もかかってしまうのだ。 もちろん、フルハイブリッドのより力強い走りやEV走行が楽しめるといったメリットがあるが、経済性のみで判断すると大きなメリットはない。これが理由かどうか分からないが、マイルドハイブリッドの方が販売台数で上回り、フルハイブリッドは2020年8月に販売を止めている。
●マイルドハイブリッドに近い4代目スイフトのフルハイブリッド
4代目スイフトのフルハイブリッドのモーター出力(10kW/トルク30Nm)は、一般的なフルハイブリッドに比べるとモーター出力が低く、燃費向上率も大きくない。コンパクトハイブリッドの代表格トヨタの「アクア」は、スイフトのモーターの約5倍の出力に相当する45kW/169Nm(最新は67kW/120Nm)の駆動用モーターを装備している。 スイフトは、車速60km/h程度までEV走行可能というものの、実際のところ電池容量も小さいので加減速があれば頻繁にエンジンが起動して、アクアに比べればEV走行の領域は狭いことは避けられない。 結果として、スイフトのフルハイブリッドの燃費32km/Lは、アクアの38.0km/L(2017年時点のJC08モード、現在はさらに向上)、フィットハイブリッドの38.6km/L(2020年モデル)に対して大きく劣っている。もちろん、この差はハイブリッドだけの差でないが、一般的に電池容量やモーター出力の差によって燃費差は大きくなるのだ。 ・・・・・・・・ EV走行ができればフルハイブリッドと呼ぶのが一般的かもしれないが、実際のところマイルハイブリッドとフルハイブリッドの明確な定義があるわけではない。4代目スイフトのフルハイブリッドの仕様や機能は、マイルドハイブリッドに近いハイブリッドと言える。ちなみにスズキは、当初使っていたフルハイブリッドという表現を最近は使わず、マイルドハイブリッドとただのハイブリッドという使い分けをしているようだ。軽自動車で一般的なフルハイブリッドを成立させるのは、物理的にもコスト的にも現実的ではないのだ。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純