“もしトラ”でEVに逆風? イーロン・マスク氏の支持表明は「業界全体がダメージを受けてもテスラは十分に体力がある」 “EV不毛地帯”日本がとるべき戦略は
■EV普及は踊り場に?今後も普及?
岩田氏は、アメリカにおけるEV普及は「踊り場に入った」との見方を示す。「テスラが2025年に小型の廉価モデルを出すという話がある。また、フォード、BMWなんかも、小さい型にチャンスがあるのではということで開発を急いでいる。ボルボの『EX30』が期待されていたが、中国との貿易摩擦や技術的な問題もあり、まだアメリカには入ってきていない。そこでEV普及が踊り場に入ってしまった感じはある」。 EUは、2035年にガソリン車の新車販売を禁止するとしていたが、合成燃料のエンジン車を容認していく方針に変更し、2023年にはハイブリッド車のシェアが拡大。また、ドイツではEV購入補助金を終了し、メルセデス・ベンツは2030年の新車販売の全EV化を延期した。
田中氏は世界の状況として、「自動車は政治的・地政学的な要素を多分にはらんでいる産業で、EVの普及は国や地域ごとに見る必要がある。普及率が高い所ではまず補助金と、ガソリン車に対するペナルティがあり、“EVのほうがコスパが良い”ということで普及しているかたちだ。また、欧州ではディーゼルゲート事件により、EVに思いきり振っていった流れがある。そんな中で、政治的な要素に目をつけて思いきり伸ばしてきたのが中国。今、ものすごく輸出を強化していて、欧州はやられている状況があり、この政治的ブーストは若干お休みになるのではないか。ただ、中・長期的にはEVの普及率は上がっていくと思う」との見方を示す。
一方、岩田氏は「アメリカは自動運転で事故が起きた時、2、3カ月後に“ソフトを改修した”“今度は大丈夫だ”と、失敗したら少し休んで立ち上がって、という繰り返しだ。EV普及が再び加速するのはおそらく2年後。フォードやテスラ、BMW、ボルボなどが新しいモデル、みんなに手が届くモデルを出せば、はずみがつくのではないか」とした。
■日本はハイブリッド車で攻めるべき?
日本の新車販売(普通乗用車)において、EVの割合は2023年で1.7%(4万3991台)。田中氏は、補助金は出てもハイブリッド車に価格で勝てないこと、新車販売の3分の1は軽自動車でEVの選択肢がそもそもないこと、バッテリーが原価の6割で儲けが少なくメーカーに売るインセンティブが働かないことから、「日本はEV不毛地帯だ」と指摘する。 「EVは買う人をめちゃくちゃ選ぶ。自宅充電ができなければ、“そのメーカーが好き”などの強烈な信仰心や、家族がその会社で働いているなどの理由がいる。日本の自動車産業はハイブリッドで世界の覇権をとり、間違いなく一番外貨を稼いでいる。トヨタやホンダ、日産など国を誇る企業がある中で、お膝元で不利なことをしなくてもいいのではないか」