ヤマハが電動車いすの完成車販売をやめて「ユニット専業メーカー」になることを宣言した理由
ヤマハ発動機は31日、約10年ぶりとなる「車いす電動化ユニット」の新製品『JWG-1』を発表。同時に、これまで完成車メーカーとして販売していた電動車いすから撤退、ユニット専業メーカーとして開発、製造に専念することを明らかにした。そこにはどのようなねらいがあるのか。 ヤマハ発動機の車いす電動化ユニット『JWG-1』
◆競争ではなく共創、電動化ユニットの輪を広げる
ヤマハの電動車いすの歴史は約30年にものぼる。1994年に電動アシスト自転車のパイオニアとして『PAS』を発売した1年後の1995年に、初の簡易型ジョイスティック型電動車いす(※)をデビューさせた。以来、改良を重ねながら台数を伸ばし、2023年は約4600台を出荷。これは同タイプのシェアのほとんどをヤマハが占めていることを意味するという。同時に、海外では今回の新型と同じようにユニットのみを販売してきた。そこにヒントがあった。
※「簡易型」とは、手動車いすに電動化ユニットを取り付けたタイプの電動車いすのことを指す。
電動車いすや電動アシスト自転車を開発するSPV事業部が使命として掲げるのは「世のため、人のために、全力アシスト!」だという。これはヤマハの企業目的である「感動創造企業~世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する~」というメッセージに連なるもので、ユニット専業メーカーとなることでより多くの電動車いすを求める人たちに提供する、というねらいがあるという。
より具体的には、これまでのように完成車を販売することで他メーカーと競合するのではなく、既存の他メーカーに電動ユニットを提供する=共創することでより多くの人たちにヤマハ製ユニットを届けたい、という強い思いだという。今後はメーカーに向けて体験や説明の機会を設け、共創の和を広げていくことをめざす。
具体的な台数目標等については語られなかったが、欧米での市場は特に大きく、さらに販売を拡大していく構えだ。今回の新型ユニットJWG-1で、タイヤ軸トルク性能の向上や、耐荷重量を大幅に引き上げたのは、日本人よりも体格の大きい欧米の人たちにも積極的に利用してもらえるようにとの対策だとも語っていた。