<内部調査>北朝鮮住民の暮らしはどうなっているのか(3) 自慢の「無償医療制」は完全崩壊していた
◆医薬品不足の代わりに乱用される麻薬
医薬品が絶対的に不足している上、住民が販売所で現金で購入しなければならなくなったわけだが、困るのはお金に余裕がない一般庶民だ。 C氏は、「医療目的でアヘンのような麻薬が再び乱用されている」と述べる。北朝鮮では、古くからアヘンが鎮痛の効果などが認められ、自宅で栽培する人も多く、医療目的で広く使われてきた。最近では、コロナが流行した時に多くの住民が、鎮痛と解熱のためにアヘンを服用するようになり、中毒症状が問題になっている。 医療と直接的な関連はないが、「ビンドゥ」呼とばれる覚醒剤が流通している。 「『ビンドゥ』はコロナ禍の時は、(中国から輸入できずに)原料不足でほとんど流通していなかったけれど、最近は1グラム中国400~500元で取り引きされていると聞きました。主に幹部やお金のある人たちが使用しているそうです」 ※ 中国1元は約22日本円。 さらにC氏は、「最近、麻薬に対する国家の統制が強化されました。使用した人より流通させた人を厳しく取り締まっています。2年の教化刑(懲役刑)になるほどです。ただ、多くの人が生活が苦しくお金がないため、以前のように覚醒剤が蔓延しているわけではありません」と付け加えた。 聞き取り調査の結果、北朝鮮での無償治療制は、もはや過去のものであることが分かった。しかし、これは必ずしも悪いこととは言えないだろう。政府は、見せかけに過ぎなかった無償治療制に長く執着してきたが、有償であっても人々の健康に有意義な医療制度が確立さればいいのである。そのためには、やはり医療・保険分野への政府の投資が必要だ。 ※アジアプレスは中国の携帯電話を北朝鮮国内に搬入し連絡を取り合っている。