なぜ巨人は“完全男”佐々木朗希の攻略に成功したのか…バットを短く持った徹底した逆方向狙いと機動力を使った揺さぶり
160km台の直球を連発し、140km台後半のフォークで相手打線を牛耳る。難攻不落の完全男を攻略する上で、指揮官が言及した「あっちの方向」、すなわち逆方向が、キーワードとして巨人打線のなかで共有されていた。 先制した2回。先頭の5番・ポランコ(30)が0-2と追い込まれながら、内角低目に落ちてきた143kmのフォークを上手く拾った。ライトフェンス最上段の手すりに当たる三塁打。続く増田陸(21)はあえてバットを短く握って右打席に入った。 佐々木の豪腕と自らのスイングスピードを比べた増田陸は、普段通りのスイングでは勝負にならないと認めていた。外角に外れた160km台の直球を見極め、カウント3-1で迎えた5球目。外角ベルト付近の161kmの直球に必死に食らいついた。 コンパクトなスイングから、逆方向の右中間へ弾き返された打球がぐんぐん伸びる。殊勲の先制二塁打に、今春のキャンプを三軍の育成契約選手として迎えながら練習試合やオープン戦で結果を残し、再び支配下登録を勝ち取ったプロ4年目のガッツマンは、初めて経験する東京ドームのお立ち台でちょっぴりはにかんだ。 「犠牲フライでも内野ゴロでもいいので、何とか1点を先制できるように思い切っていきました。本当にいいピッチャーなので、速くて強い真っ直ぐに振り負けないようにバットを短く持って、コンパクトな振りを意識して打ちました」 7番・中山礼都(20)も、そして8番・小林誠司(32)も、下位の打者は全員がバットを短く持って佐々木に食らいついた。4回の先頭で左打席に立った中山は、9球も投げさせた末に佐々木のエラーで出塁。小林の遊ゴロの間に二塁へ進み、外角低目の157kmの直球をライト前へ弾き返した1番・丸佳浩(33)の一撃で4点目のホームを踏んだ。 1点を先制された2回だけで、佐々木は28球も投げさせられている。100球を超えたのが2度だけで、直近では90球前後で交代している佐々木の起用法を考えれば、下位打線が粘った2回は、ボディブローと化して3回以降の連続得点に結びついた。