子宮内膜症、進行や痛み抑制 鳥取大・谷口教授らグループ 症状緩和させる作用発見 妊娠に影響ない薬開発へ
30~40代の女性に多くみられる「子宮内膜症」の進行や痛みを抑える新しい作用を、鳥取大医学部産科婦人科学分野の谷口文紀教授(56)ら研究グループが発見した。痛みなどの刺激を感じる「受容体」の働きを阻害する薬を用いて症状を緩和させる仕組み。新薬の開発や実用化が期待される。 【写真】P2X4の働きを抑えて痛みを和らげる阻害薬のイメージ図
子宮内膜症は国内で少なくとも300万人以上の患者がいるとされる。子宮の内側以外に子宮内膜やそれと似た組織が生じ、強い痛みや不妊の原因になる。 現時点では、手術をするか、女性ホルモンの分泌を抑えるホルモン剤による投薬治療が主流。しかし、避妊の効果があるため妊娠を希望する患者には対応できない課題があった。 研究グループは炎症による痛みがあった時に生じる物質「ATP」(アデノシン三リン酸)と、それを取り込むタンパク質「P2X4」に着目した。 マウスを使って子宮内膜症の状態を作り出してどのように痛みを感じるか実験したところ、P2X4の働きを阻害する薬を投与したマウスは痛みが抑えられていることを突き止めた。P2X4がATPを取り込んで活性化することで痛みを起こす物質が多く生み出されるとみられる。 用いられた阻害薬は神経障害性の痛みの治療薬に開発され、すでにヒトへ投与した際の安全性を確かめる3段階の試験の1番目に当たる第一相試験を終了。今後多くの治験で副作用の有無などを確認する必要はあるが、一から薬を開発するよりも、比較的短期間で子宮内膜症の治療薬として実用化できる可能性もあるという。
谷口教授は「それぞれの患者の希望に合わせた適切な治療の提案が可能になる」と期待を寄せた。 研究成果は10月22日に米国生殖医学会の学術誌「F&S Science」で公開された。