伝説の天才料理人ベルナール・ロワゾーの娘が跡継ぎの道を選んだ理由
フランス料理界のスターシェフだった父、ベルナール・ロワゾーが突然この世を去った際、周囲はこう口にするのをはばからなかった。 「店は1年ともたないだろう。偉大なるシェフはもういないのだから」 それから21年、ベルナール・ロワゾーグループは仏国内に5つのレストランと2つのホテルを展開し、今年6月には東京日仏学院の敷地内に「ロワゾー・ドゥ・フランス」をオープンさせた。28歳の次女ブランシュが、同店のエグゼクティブシェフを務める。7歳上の姉はグループCEOだ。 「経営戦略に長けている姉に対し、私は現場向き。視点のもち方は異なるけれど、常に同じ方向を向いてきた気がします」と、ブランシュは言う。 昨年、従業員100人超のグループ企業を母から完全に引き継ぎ、姉妹で新たに2店舗をオープンさせた。父が遺した本店の売却を考えたことは一度もない。 失敗は許されない、道を誤ってはいけない──。巨匠の娘という重圧がないわけではないが、「14歳のころから店の厨房を手伝っていた私にとって、引き継ぐことは自然な流れでした。誰に強制されたわけでもない。あくまで『自分で選択した』道なんです」。 彼女が腕を振るう東京の店では、スタッフのほとんどが年上の男性だ。 「でも私には、すでに1店舗を軌道に乗せた経験と自負がある。トップに立つ以上、自分に自信をもってチームを率いていきたいと思っています」 ブランシュ・ロワゾー◎1996年生まれ。ポール・ボキューズ料理学院で学び、フランス国内外で修業。2019年には東京、金沢、京都の日本料理店で1年研鑽を積み、21年にベルナール・ロワゾーグループへ。「ロワゾー・ドゥ・タン」料理長を経て現職。
Forbes JAPAN | magazine