中国・習近平国家主席の「焦りと危機感」…経済成長目標「5%前後」を残り2カ月で達成できるか 景気停滞、若者の失業率高止まりなど
経済対策を矢継ぎ早に打ち出す習近平政権
失業率との関連は不明だが、中国では刃物による切りつけ事件が相次いで発生している。 9月には広東省の深センで日本人学校に通う男子児童が刃物で刺され死亡したほか、上海のショッピングセンターでは刃物で襲われた3人が死亡した。上海の事件で拘束された男には経済的な問題があったと地元公安当局が明らかにしている。 10月には首都の北京で富裕層が住むエリアのエリート学校の近くで切りつけ事件があり、子供3人を含む5人が負傷した。 習近平政権は経済対策を矢継ぎ早に打ち出している。不動産不況対策として地方政府による住宅在庫の買い取りのほか、9月以降も中国人民銀行が金融緩和策、財政省が国有銀行の資本強化などを相次いで発表した。 11月4日から始まった全人代(全国人民代表大会)の常務委員会では追加の経済対策が検討されるとの見方がある。 そして、習近平国家主席による経済目標達成要求と失業対策問題の解決への指示。トップ自らのこうした動きについて中国の知人は「異例」だという。 胡錦濤時代では経済運営は首相が担当するという、慣例というか棲み分けのようなものがあった。しかし、習近平一強体制下での経済政策は「核心」である習氏が主導しているとされ、実質「責任者」とも言える。 残り2カ月、習近平氏の焦りと危機感が垣間見える。 執筆:北京支局長 垣田友彦
垣田友彦