かんぽ不適切販売問題 特別調査委が会見(全文1)モラルに欠ける募集人が存在
原因の分析
伊藤:次に原因分析について話します。ここではこの1番、実際の不適正募集の現場に近いほうから遠いほうへといいますか、そういう形で検討をしております。まず不適正募集の発生につながる直接的な原因。募集人の一部にはモラルに欠け、顧客第一の意識やコンプライアンス意識が低く、顧客の利益よりも自己の個人的な利得等を優先させる者が存在していたこと。それにもかかわらず、このような不適正募集のリスクの高い募集人に対し、実効的な研修や教育、指導等の取り組みを組織的に行ってこなかったこと。 次に、郵便局等の営業目標達成のために高実績者である募集人に依存せざるを得ない状況の中で、上司等が募集品質に問題がある募集人を厚遇してきたため、販売実績を上げる手段として不適正募集が黙認されるという風潮が形成され、不適切な勧誘の話法を含めた不適正募集の手法が各地に伝播していったこと。高実績者でない募集人についても、自身の所属する郵便局等の営業目標達成を理由に不適正募集を行うことが正当化される風潮が形成されていたこと。販売実績を上げるための自主的な勉強会等を含め、不適正募集の手法が共有される機会が存在していたにもかかわらず、これに対する適切な対応が講じられてこなかったこと。
不適正募集を助長した要因
次に、不適正募集を助長した要因について述べます。営業目標必達主義を背景とした厳しい営業推進管理が行われていたこと。新規契約の獲得に対する直接的なインセンティブを付与する募集手当など、新規契約獲得に偏った手当等の体系となっていたこと。次に、営業目標の設定および配算の結果、一部の募集人に対して達成困難な営業目標が課されていたこと。かんぽ生命の貯蓄性保険商品の販売が困難となりつつある中で、保有契約数の底打ち反転のために、高齢者を主な顧客層とする経営目標の設定と実現に向けた営業推進管理自体が不適正募集を助長したこと。不適正募集の疑いを生じた募集人に対して、徹底的な調査と、これを踏まえた厳しい不祥事件・不祥事故判定や処分等が行われてこなかったこと。これは募集人の自認に過度に依存した事実認定を行っていたこと。あるいは、募集人や管理者に厳しい処分等の制裁が科されていなかったことであります。 次に、不適正募集を防止できなかった構造的要因について述べます。不適正募集を抑止する体制の整備が不十分であったこと。その中身としましては、申し込み関係書類審査の手続きや、引き受け手続きに不適正募集を防止するための手続きや仕組みが組み込まれていなかったこと。不適正な乗り換え契約を含め、顧客に不利益を生じさせる恐れのある保険募集を未然に防止するためのツールとしての契約者情報等の管理システムの整備が不十分であったこと。不適正募集に係る社内ルールに不備があり、その潜脱を招いたこと。製販分離体制の下、委託元保険会社であるかんぽ生命による、委託先代理店である日本郵便に対するコンプライアンス上の統制が脆弱であったこと。 次に顧客に不利益を与える乗り換え契約等の不適正募集の実態が長期間にわたって把握されてこなかったこと。その中身としましては、顧客の苦情等を含め不適正募集の疑いに係るリスク情報がもたされても、リスク感度の低さに起因し、これらの情報が問題点等の発見に生かされず、矮小化された結果、問題の根本解決がなされず、実態把握の遅れにつながったこと。かんぽ生命保険の募集に係るコンプライアンス・リスク管理体制に不十分な点があり、顧客に不利益を与える乗り換え等の不適正募集の兆候を発見できなかったこと。顧客に不利益を与える乗り換え契約等を含め、不適正募集の実態把握につながる現場の声が経営層に届かない組織風土となっていたこと。