善意で成り立つ“こども食堂”をどう支えるか 食べ物を転売する子、貧困を隠して行かせない親 当事者に聞く現状
■大阪のたこ焼き店でトラブルも店長「こども目線で話すようにしている」
「たこば」店主の島田良太さんは、「いろんな人からの助けがあって続けている状態だ。食材費が圧倒的に苦しい」と語る。たこばのこども食堂は「月1回ペースで、たこ焼6個が10円や50円になる」。SNSでも告知して、「8月は1日100人くらい来た」という。 親からは「電気代などが高く、ちょっとでも食費を抑えたいから」と喜んでもらえた。しかしながら、材料費の負担や「1人でやっているため、たくさん来ると困る」といった悩みもある。また、「うちでは中学生以下だけが対象だが、理解してもらえずトラブルが起きた」とも明かす。 その一例が“転売”だ。「中学生が『代わりに買いに行く』と言って、10円のたこ焼きを100円で売って90円の利益を得ていた。買った子が『本当なら10回買えたのに』と母親に言って、連絡を受けた。転売したのは毎日来ている子で、『あかん』と正直に注意した」。 開始当初は「1日に何度来てもいい」としていたが、トラブル後は「1日1回」に変えた。「できれば店内で食べてほしいが、店内に中学生がいて、中学生が怖いなどの場合は『持って帰ってもいいが、家で食べて』と言う。少しでも怖い言い方をすると、すぐ泣いてしまうので、できる限りやさしく、こども目線で話すようにしている」と説明する。 山梨県立大学講師の関屋光泰氏は、自身でもこども食堂を運営しているが、同じく転売被害にあったことがあるという。「メーカーから食料品の提供を受けて、配布する“フードパントリー”を行ったら、直後にフリマサイトで転売された。事情があるのかもしれないが、メーカーの厚意や信頼があってのもので困ってしまう」。
■空腹を満たすためだけではない「こども食堂」の価値
ギャルタレントのあおちゃんぺは、「こども食堂は、空腹を満たす場よりも、ひとりぼっちで食べている子が、周囲の大人たちと一緒に食べることに意味がある。食卓を囲んで、学校や友人の話をすることが大事だ」と語る。 加えて、「見えない貧困」ではなく「見せない貧困」の存在を指摘する。「親にプライドがあると、『かわいそう』と見られたくない葛藤もある。貧乏だと思われたくない親を、どうつなげていくかが重要だ」。 モデル・商品プロデューサーの益若つばさは、こども食堂に「貧困のこどもたちに届けたい」といったイメージが付いている現状があると考察する。「貧困の子が『恥ずかしい』と思ったり、親が行かせたくなかったりする話があるなか、たこばの試みは“たこ焼パーティー”のようで素敵だ。階層に関係なく、いろんな人が参加できる」と評価する。 こども食堂には「支え合いの意味合いもある」と関屋氏は説く。「ボランティアを行う側も、子育てやシングルマザーのように、自分自身にも余裕がない人たちは多い。支え合っている趣旨を伝えながらやっていこうとしている」。