会社に壊されない生き方(7) ── 小さな仕事「ナリワイ」組み合わせ生きる
「モンゴル武者修行ツアー」というナリワイもある。モンゴルで、遊牧民に乗馬技術や乳食品の作り方、羊の毛刈り、フェルト作り、ゲル(移動式の住居)の張り方などの生活の技を学ぶツアー。もともとモンゴルが好きだったが、参加したいツアーがないため自ら企画した。伊藤さんは、自らが楽しめて、参加者も満足する適正な回数があると考えており、ツアーを実施するのは年2回ほど。 このほか、大学同期の農家で行う梅・みかんの収穫および販売、田舎で土窯パン屋を開くためのワークショップなどがある。ナリワイによって稼ぎの額はさまざまだが、たとえあまりお金にならなくても、支出が下がるなど損はないと伊藤さんは考える。「支出を減らすのは自分の生活をつくることになります。いろいろなチャレンジをするうちにそのいくつかは収入にもなっていくので、年収がさほど上がらなくても余裕が増えてきます」。
自分なりのナリワイを見つけるために
自分なりのナリワイを見つけるためにはどうすればいいのか。伊藤さんは「余剰」「無駄」「特技」の3点に着眼する。 たとえば、梅の収穫および販売の場合、梅は短い期間に自分たちで売り切れないほど大量の実がなるので「余剰」が生まれる。流通コストは価格の半分以上を占めるほど高いのが難点。つまり「無駄」だ。伊藤さんは収穫期に駆けつけられる身であり、ウェブを通じて物を売る知識もある。これが「特技」だ。というわけでこのナリワイが生まれた。 「アイデアが出ない人は、まねをすれば良いと思います。梅やみかんでなくても、ぶどうやブルーベリー、キウイでもできないか考えてみてはどうでしょうか」。伊藤さんは今後、ナリワイ生活を志す人の手伝いにも力を入れたいと考えているという。 ナリワイ生活のなかで、伊藤さんは多くの技術やノウハウを身につけてきた。人間関係も年々豊かになり、さまざまな分野の仲間や、新たな取り組みをする上で相談できる人も増えたという。 伊藤さんは「個人的には、週休2日という働き方は頭脳労働に関しても最悪で、月の半分働いて、残りの半分を完全自由で副業するとか、10日連勤して5日休むなど一週間という単位に縛られない考え方が出来たらよいと思います」と話した。 (取材・文:具志堅浩二)