北朝鮮が南北軍事境界線の北側に建設した壁＝韓国軍合同参謀本部提供

　【ソウル＝小池和樹】朝鮮中央通信によると、北朝鮮の朝鮮人民軍総参謀部は９日、韓国と北朝鮮をつなぐ道路と線路を遮断し、「堅固な防御物で要塞（ようさい）化する」と発表した。韓国を「第１の敵対国」とする金正恩（キムジョンウン）朝鮮労働党総書記の方針を反映した措置とみられ、南北間を「徹底的に分離する」と強調した。工事に着手するとしている。

南北軍事境界線の北側で、壁の建設作業などに動員されたとみられる北朝鮮の兵士ら＝韓国軍合同参謀本部提供

　人民軍総参謀部は発表で、南北の軍事境界線付近での韓国軍の訓練や米軍の戦略爆撃機などの朝鮮半島付近への展開を挙げ「一触即発の戦争危機が高まっている」と主張した。韓国を「不変の主敵」と表現し、国境の遮断や封鎖は「自衛的な措置だ」と正当化した。「要塞化」に向けた工事については、誤解と偶発的衝突を避けるため、米軍側に通知したと説明している。

　韓国軍は９日、「一方的な現状変更を図る北朝鮮のいかなる行動も座視しない」とのコメントを発表した。

　北朝鮮は昨年末、これまでの平和統一路線の放棄を表明し、１月の最高人民会議（国会）では正恩氏が南北間の道路などを「物理的に完全に切断」するよう命じた。その後、北朝鮮が軍事境界線付近でコンクリート製の壁を建設したり道路に地雷を埋めたりする動きが確認されていた。

　一方、朝鮮中央通信によると北朝鮮は７、８日に最高人民会議を開催した。憲法改正が議題となったが、韓国を「第１の敵対国」と位置づける改正があったかどうかについて言及はなかった。正恩氏の出席も伝えられていない。