「どこにメモしたか忘れてしまいました」…発達障害かもしれない部下を指導するとき、絶対言ってはいけないセリフ
発達障害だと決めつけることはNG
しかし、本人の立場からすれば、「悪気があって上司を困らせているわけでもないし、自分なりに頑張っている。なのに自分に対してだけいつも当たりが強く、上司は自分を嫌っているのではないか。これはパワーハラスメントかもしれない」ということになります。 ここまでくると、上司と部下の人間関係はすでに崩壊に近い状態になっていて、修復が難しいことも少なくありません。 このような状態になる前に、専門家や人事のところに相談にきてくれていたら、と思うことが多々あります。 発達障害の知識などがあったとしても、すぐに部下や後輩を発達障害だと決めつけることはNGです。 「あれ?」と思うようなことが増えてきたら、まずはどのような場面で、なにに対してそう思ったのかメモしておくなどして、早めに専門家に相談することをお勧めします。 専門家であれば、相談者の心のケアをすると同時に、困っている部下や後輩に対して、どのような対応方法が良いかを一緒に考え、ハラスメントにならない伝え方などをアドバイスしてくれるはずです。 アドバイスをもらって、「頑張ってはいるが、できない自分自身に対して、もどかしいものを感じているのだろうな」などと部下の立場になって考えてみると、自然と部下のつらさにも共感するような接し方ができます。 そうすると、注意するときでも、最初に「あなたも努力しようとしてくれていることは分かるけど……」などという言葉が出てくるため、部下からすれば、全体的にグッと柔らかい印象を持つことになります。
ハラスメントにならない伝え方
また、「一緒に対策を考えよう」「どんなことで困っているのか一緒に整理しましょう」などと、一緒に課題を解決する姿勢があることを口に出すことも必要です。 部下に「真剣に考えてくれている」という気持ちが伝わり、注意や指摘されていること自体をパワーハラスメントと受け取ることもなくなります。 そもそも職場のパワーハラスメントとは、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものをいいます。 パワーハラスメントになりうるのは、上司が部下に対して「怒り」を感じる状況が出現したときなどです。 「怒り」のメカニズムを理解し、コントロールする方法も覚えておくと良いでしょう。脳内の側頭葉や海馬の近くに位置する扁桃体は、怒りや不安、恐怖といった感情を強く感じると活性化することが分かっています。 こうした感情が脳と身体を完全に支配してしまうことを「扁桃体ハイジャック」と呼びます。 これらの感情が自分にあることを認め、「怒り」と「実際に怒っている自分」を同一視せずに、「怒り」を手放すことが重要になります。その具体的な方法としては、次のようなものがあります。 ・我を忘れて怒鳴り散らさないように、口を閉じて沈黙を維持する。 ・その場で深呼吸し、怒りが収まるまで6秒待つ。 ・怒りに限らず、ネガティブな感情が湧き起こったら「ちょっと失礼」などと言って、その場から離れる。 また、普段から自分がどういったときに怒りやすいかなど、自身の怒りのメカニズムを把握しておくことも大切です。 文/舟木彩乃 写真/Shutterstock