揉めずに現状を打破したい人が取るべき10のステップ
■新たな提案には勇気だけでなくスキルが必要 イノベーションには、逸脱が必要である。イノベーションは、革命的なものであろうとなかろうと、少なくとも一部の建設的な反対意見、システムを揺るがすアイデアの核心から始まる。 しかし、システムを揺るがすこと自体は難しくない。化石と化し、縄張り意識が生まれ、反発するのはシステムではなく、進歩を妨げる人間である。実際、現状への執着が深ければ深いほど、低下していく価値に対する「故意の盲目」は程度を増す。そこに危険が潜んでいる。 では、現状に反するアイデアやフィードバックは、どうすれば共有できるのだろうか。そのためにはまず、明快な論理や非の打ち所のないデータを示すことより、凝り固まった枠組みを取り除くことが重要だ。たとえ天地を揺るがすようなことを言うつもりはなくても、あなたが求めようとしているのは、絶対的な信念の破壊であり、マインドセットの放棄であり、忠誠心の転換といえる。それは、理性よりも感情や政治的な方向に向かいがちである。 そのため、現状に立ち向かうことにリスクを感じ、自己検閲によって発言を控えてしまう人が多いのも無理はない。完成されたものを脅かすことは、それを築き維持する人々を脅かすことだ。自尊心を傷つけ、業績の悪さを露呈し、権力を再配分し、階級構造を根底から覆すことになるかもしれない。おそらくそうなるだろう。少なくとも、現状に異論を唱えるという大仕事には、前後関係、人間性、自己利益が絡んでくる。 皮肉なことに、現状に異議を唱えるのは、互いの安全を守る方法であるにもかかわらず、恐怖を感じる場合が多い。たとえば、メッセージが弱いために広告費を無駄使いしていることを、どうやってマーケティングに納得させるか。少額の予算申請に対する期待収益の基準を下げるよう、どうやって財務に要求するか。いまの新入社員研修のやり方では、退屈で効果がないことをどのようにわからせるか。生産本部長の昇進に組織的なジェンダーバイアスが見られることを、どのように人事に知らせるか。新製品発売によって発生しうる意図しない問題について、どのように提起するか。 ロジックとデータを突きつければよいのだろうか。 もし現状が凝り固まっているだけでなく、あなたに職務上の権限がなかったらどうするか。入社したばかりだったり、自分の専門外のこと主張したかったりしたら、どうするか。もしあなたが社会的弱者のグループに属し、現状に立ち向かうことが特に危険で、あなたの評判や昇進のチャンスを損ねる可能性があるとしたらどうだろう。 筆者は、世界中の企業と仕事をする中で、現状に立ち向かうには勇気だけでなくスキルも必要であることを学んだ。本稿では、そのスキルを身につけ、リスクを減らし、成功率を高めるための10の具体的なステップを紹介しよう。