忘年会シーズン到来!! でも、昔みたいにバカ食いできない寂しさに今こそ考えたい「胃もたれ」との上手な付き合い方
■胃もたれが示す新たな人生 飲み会もチートデーも、人生を楽しくするための「ハレ」なのだから盛大に楽しみ、普段の「ケ」で収支を合わせるという白央流は、目の前の誘惑に弱くついハメを外しやすい人――つまりほとんどすべての人――にも実践しやすそうだ。 ただ、料理をまったくしない人にとっては、本で紹介されている「肉でも野菜でも汁物にする」「鶏胸肉でゆで鶏を作っておけば便利」といった知恵も、難しく感じられるかもしれない。うどんやおかゆが胃に優しいことはわかっていても、作るとなるとどうすればいいかわからない、そんな人もいるだろう。 「うどんやおかゆは、レトルトや冷凍食品でおいしいものがたくさんあります。既製品で自分の胃をケアすることは十分にできますし、余裕があればそこに野菜をちょっと足してもいい。 生野菜を買うと余らせて腐らせてしまうという人もいるかと思いますが、ブロッコリーからインゲン豆、ホウレンソウや根菜類までいろいろな冷凍食品が売られていますし、なんなら『ささみブロッコリー』という冷凍食品まで発売されているほどです。自分にやりやすい方法で、普段の食事を考えればいいんじゃないかなと思いますね」 胃薬で帳尻を合わせてきたフードライターは、手を抜くべきところで手を抜くことに、ためらいを感じていない。そういえば、常備している「個人的おすすめレトルトカレー」を紹介する一節に続けて、白央さんはこう続けてもいる。 以前はレトルトや冷凍食品に頼るなんて手抜き、と思ってしまう自分もいた。でも手をかけられないなら手を抜くしかないじゃないか。その抜いた手は疲れた自分を休みほぐすために必要なのだ、といまは思える。自分を擁護出来るようになって、私は成長したと思う。 もうひとつ大事なことがある。それは「胃に優しい生活」は、決して忍耐でも苦行でもないということだ。 ここ数年で、私にとって厚揚げは肉や魚と同等の存在感になっている。そう、厚揚げが好物になって久しい。 年齢を重ねることで、食の好みが変わるのだ。ミョウガや大葉の苦みやクセをおいしく感じている自分に気づいたり、煮物でお酒を飲むことがとてつもない幸福に思えるようになる。加齢は確かに衰えではあるが、知らなかった新しい楽しみを発見し、獲得していくプロセスでもある。 「本に推薦文を寄せてくださったジェーン・スーさんが、テレビで更年期を〝更新期〟と表現されていて、目を見開かされた思いがしました」 胃に優しい生活は、未知の好物を探す長い旅路であり、胃もたれは進むべき道を指し示す羅針盤なのかもしれない。これから迎える忘年会シーズンで、新しい好物と巡り合うことができれば、新しい年をより新鮮な気持ちで迎えられるのではないだろうか。 ■『はじめての胃もたれ食とココロの更新記』 白央篤司著 太田出版 1980円(税込) 取材・文/柳瀬 徹