自分にとってウェルビーイングな会社とは?【藤田康人のウェルビーイング解体新書】
三つの会社を経験して思うこと
渋谷区千駄ヶ谷のマンションの一室で、9人でスタートしたインテグレートは、立ち上げ当初から試行錯誤の連続でした。 有力大手広告会社が幅を利かせる業界にあって、自分たちの存在をアピールするのは決して簡単ではありませんでした。 苦労の末、ようやく仕事が増え始めると、今度は人手が足りなくなります。その都度、人材の募集をかけてみるのですが、できたばかりの小さな会社に、経験豊かで優秀な人材はなかなか来てはくれません。それでも、徐々にわれわれの目指す新しいマーケティングのスタイルに共感してくれる同士が集まりはじめました。 「最高のマーケティングをクライアントに提供したい」という熱い思いを皆が抱き、狭いオフィスで夜を徹してディスカッションしては、企画書を書き上げ、クライアントにプレゼンする毎日が続きました。 そんな努力が少しずつ実り、徐々に人が増えて100人近い優秀なメンバーが集まり、素晴らしいチームが出来上がりました。 大企業には、長年の歴史で培ったさまざまな有形無形の資産があります。私が二つのベンチャー企業で何とかやって来られたのは、味の素時代に得た人脈、ビジネススキル、ネットワークがあったおかげです。 ベンチャー企業には、大企業のように豊富な資産も安定もありません。しかし、大きな希望とチャンスがあります。自分が手を上げれば何でもできる、任せてもらえる機会が大企業に比べてはるかに多く存在します。そして未来への夢を熱く語りあえる仲間たちがいます。 就職や転職や起業は、自分の人生が決まるほどのとても大きな決断です。人にとって幸せの価値観はさまざまです。安定を重視する人もいれば、夢を求めてチャレンジする人もいる。 私は三つの会社を経験して、やはりウェルビーイングの最大の要素は人ではないかと改めて思うのです。 「大事なのは、どこで働くかではなく、何を目指して誰と働くか」であると。 (藤田康人/株式会社インテグレート代表取締役CEO)
朝日新聞社