中井貴一のお宝は「親父の腕時計」、佐々木蔵之介は「カレースプーン」
中井貴一と佐々木蔵之介のW主演が話題の映画「嘘八百」(武正晴監督)は、”千利休の幻の茶器”をめぐり一攫千金を狙う痛快エンターテインメント。冴えない古物商・小池則夫役の中井と落ちぶれた陶芸家・野田佐輔役の佐々木が、騙し騙されつつの出会いから一世一代の大芝居を打つ痛快コンビとなっていく。意外にも本格的な共演は初めてという2人に聞いた。
バッテリーのように、安心して共演できた
「蔵之介君とは、すごくやりやすかった」となめらかな口調で語る中井は、「16日間しか撮影期間がなく、極寒の真冬の大阪・堺での撮影でしたから、どうなるかと思っていたのですが」と、撮影前には多少のプレッシャーもあったことを明かす。 「役者なんて仲良しごっこはいらない。普段の生活の中で仲良くしてなかったらいけないとか、そういうことは一切ないと僕は思ってるんです。野球のバッテリーみたいなもので、たいていはどちらかがピッチャー、どちらかがキャッチャーにならないといけない。それが(佐々木は)スッと、何もいわなくても、『ここはおれがピッチャーやるから』って思った瞬間、『僕、キャッチャーで座ります』って座ってくれる。そういう俳優さんってやっぱり安心感あるんです」 笑顔で共演の感想を語る中井を見やり、佐々木は「そういうふうにおっしゃっていただいてとても光栄だし、ほっとしています」と、恐縮ぎみに口を開く。
「現場での雰囲気とか空気感みたいなものを、打ち合わせせずに芝居の中で感じられる。貴一さんがそういう雰囲気をつくってくださったんだと思います。貴一さんの芝居に対する姿勢、たとえばホン(台本)の面白がり方が、『僕わかります、その面白がり方! そこふくらますとかそこ大事にするの、わかります』と思えた。そういうところが、なんとなく合ってたような気がします」と、気負わずにすんなり、撮影に入れたようだ。 共演には友近、森川葵、堀内敬子といった女優陣から、寺田農、近藤正臣、芦屋小雁らベテラン勢もそろう。中井は「諸先輩方のお力を借りて、一本の映画ができたという感じです」とリスペクトを忘れない。そして、「舞台の上に立った瞬間、カメラの前に立った瞬間、そこでお互いの最高のリレーションシップができさえすれば、ほかのことはいらない。それが出来る人たちと現場にいるのはすごく幸せです。お互いの距離感だと思うのですが、諸先輩に対しての後輩も、みなそれをわきまえてくれている。それがわかるかどうかっていうのがプロかどうかの違い。プロが集まっていた現場だなあって気がしますね」と語る。