中井貴一のお宝は「親父の腕時計」、佐々木蔵之介は「カレースプーン」
中井「俺は騙されないタイプ」、佐々木、女性なら「騙されてもいいと思っています」
騙し騙される展開は観ていてハラハラさせるが、「おれは騙されないタイプじゃないかなあと思ってるんですけど、そう思ってる人のほうが騙されるらしいですよね」と笑う中井。「本当に(相手を)信じてしまったら騙されるかもしれませんが、その、信じるまでが意外と道すじが長いタイプなんで、そういう意味ではなかなか騙されないと思います」と自己分析。 一方、佐々木は「騙されても気づきたくないですね。騙されっぱなしでいい」と語る。「海外いったときに、空港からホテルまでの間が一番緊張するんですよ。夜に着いたときなんか、果たして無事にタクシーでホテルまでたどり着けるか。高い金を取られたり、別の場所に連れて行かれたり、騙されたら嫌だなと」 男性女性、騙されるならどちらがいいか聞いてみると、「女性にはもう騙されてると思いますよ」と即答した中井。 「絶対わからないですもん、女性の嘘は。男の嘘はなにか透けて見えるものがあるけど、女性の嘘は見抜けない。だから、きっと自分でもわからないまま、これまでの56年間の人生で騙されてきた嘘は、山のようにあるんだろうと思います。それはもう、わからないまま死にたいです」と大笑いする。 佐々木も「騙すというより、乗せてもらってるんじゃないですか。気持ちよく乗せてもらえるんなら、女性のほうがいいですね。それなら、この先、別に騙されてもいいと思っています」と笑う。
中井のお宝は父の形見の腕時計、佐々木は小さい頃から使っているカレースプーン
映画のチラシには”お宝コメディ”とのコピーも躍る本作。骨董の茶器をめぐり、本物以上の贋作を作って仕返しついでに一攫千金をねらう。実際にお宝と呼べるようなものを持っているか聞くと、「いや、とくにないな」という佐々木に対し、中井が「あるじゃない、あのスプーン」 小さなころから家にあったカレーライス用のスプーンをあげた佐々木。 「柄のほうにターバンを巻いたインド人風の絵が描かれていて、僕は“カレーのおじさん”って呼んでるんですけど。いまだにカレーはそのスプーンで食べます。名古屋に行ったとき同じスプーンを発見して、レトルトパック3個セットを買うとスプーンがもらえるというので即買い。で、家で比べてみたら、カレーのおじさんがちょっと太ってるんですよ」と楽しそうに話す。 一方の中井は、父親の形見ともいえる腕時計をあげる。 「仕事を始めたのが大学1年の終わりごろ。急におふくろが、『仕事するなら時間には正確でいなさい』と、亡くなった親父(俳優・佐田啓二)が愛用していた時計をくれたんですよ。親父の腕の上で時を刻んでいたものが、年月を経て、今度は自分の腕で自分の人生の時を刻んでいる……。もちろんそれはいまでも宝物ですし、大事にしています」 格好よすぎる中井のお宝エピソードを聞いて、「カレーのおじさんスプーンの話なんか言わなかったらよかった」と恐縮しつつ照れ笑いする佐々木に、「じゃあ僕はイタリアおばさんの絵が描いてあるフォークでスパゲティ食べてたってことにしといて」と大笑いで返す中井。 取材の間も、息の合った二人。最後にそれぞれの映画の見どころについて語ってもらった。
「基本的に映画って、最初から最後までが見どころ。この作品には社会風刺というか、本物と偽物ってどういうものなのかちゃんと見極めろっていうメッセージも入っていると思います。お正月、家族で観ていただけたらなって思います」(中井) 「ある意味サスペンスですね、この映画は。騙すか騙されるかっていうギリギリのところで、ちょっと錆びついたけれども再起かけてやってみようかとオッサンたちが頑張るので、ご家族みんなで見ていただけたら」(佐々木) 映画「嘘八百」は、1月5日から全国公開。 (取材・文・写真:志和浩司)