石川柊太が示した支配的「1.90」 FA移籍で本拠地は相性抜群…期待される“追い風”
ZOZOマリンスタジアムではキャリア通算7勝1敗、7連勝中
次に、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を表す、「被BABIP」という数字について見ていきたい。被BABIPは投手自身にコントロールできる要素が少なく、運に左右される部分が大きい指標であると考えられている。石川柊のキャリア平均は.258と、一般的な基準値と考えられている.300を大きく下回っている。しかし、2021年以降は4年連続でキャリア平均を上回り、キャリア初期に比べてやや運に恵まれなくなっていることが示唆されている。 そして、2024年の被BABIPは.270とキャリアで2番目に高い数字だったものの、防御率やWHIPの改善をはじめ、さまざまな指標で優秀な成績を記録した。被BABIPがキャリア平均を上回るシーズンにおいても好投を見せた点は、今後に向けても明るい材料と考えられる。 続いて、ZOZOマリンスタジアムでの年度別投手成績を見ていきたい。キャリア通算で7勝1敗、2018年以降は7連勝を継続中であることに加えて、通算防御率も2.47と優秀だ。2024年までは登板機会が比較的少ないビジター球場でありながら、無類の相性の良さを誇っていることが数字にも示されている。しかし、意外にもZOZOマリンスタジアムでのキャリア初登板となった2017年8月8日の試合では、3回1/3を自責点6と打ち込まれていた。しかし2018年には早くも球場の特性に適応して登板した3試合全てで白星を挙げ、それ以降は負け知らずの投球を続けている。 さらに参照する数字を2018年以降に限定すると、7年間で防御率1.90とまさに支配的と呼べるレベルまで数字が向上。防御率4.61と例年に比べて苦戦した2021年を除く5シーズンはいずれも防御率2点台以下と、コンスタントに好投を見せてきた点も頼もしい要素だ。
直近3シーズンの奪三振率は9.06と抜群の水準
通算の球場別奪三振率は7.85とキャリア平均をわずかに上回る水準だが、こちらも参照する数字を2018年以降に限定すると、奪三振率8.07とさらに数字が上昇する。球場の特性でもある独特の風によって得意球のパワーカーブの切れ・落差がともに増すことにより、奪三振能力も普段以上に高まっていることがわかる。直近3シーズンは50.2イニングで51奪三振と投球回を上回る三振数を記録し、奪三振率も9.06と抜群の水準に達する。投球内容が年を経るごとに進化を遂げている点も、石川柊の球場に対する適応力を表す要素の一つだ。 とりわけ、2024年は3試合で12イニングを投じて11奪三振を記録し、与四球はわずかに1、自責点は0と圧倒的なピッチングを展開していた。これだけの投球を見せつけた球場が本拠地となる2025年シーズン、石川柊投手がどのような投球を披露するかは見ものだ。 ロッテが近年においてFAで獲得した先発投手である涌井秀章投手と美馬学投手は、いずれも移籍後に2度の2桁勝利を記録してローテーションを支える存在となった。石川柊も新天地で活躍を見せ、先発陣の中心的存在となる可能性は十二分にあるだろう。相性抜群の球場で文字通りの“追い風”を受け、先発投手としてさらなる飛躍を果たせるか。育成契約から這い上がって投手2冠に輝いた右腕が、新天地で迎えるプロ12年目のシーズンに見せる投球は、ファンならずとも興味深いものとなってきそうだ。
「パ・リーグ インサイト」望月遼太