銀行からの資金調達、決算書だけでは不十分!?…融資の成功率を高める「+α」の提出物【元メガバンク支店長が伝授】
「会社」と「個人」の区別はついている?…「雑勘定」も重要
3.売掛金の状況 売掛金が平均月商に対して何カ月分あるか、3期分の売掛金明細を確認して同じ取引先の売掛金が残ったままになっていないかもチェックします。売掛金が長期間にわたって回収されていないということは、不良債権になっている可能性があるためです。 また売上の回収条件から算出される推定残高と比較して、高過ぎないかをチェックします。 4.棚卸資産の状況 棚卸資産(在庫)が急増していないか、回転期間「棚卸資産÷(売上原価÷12)」が長期化していないかなどをチェックします。特に不良在庫の有無や発生可能性などについて入念に調べます。 例えばアパレルは基本的に4カ月を超えないのがラインです。ファッションは季節を跨ぐと主要商品が替わってしまうため、現金化できる可能性が低い「不良在庫」になってしまうという理由からです。 5.減価償却費の計上 償却資産に対して適正に減価償却費が計上されているか、税務申告書の「別表16」でチェックします。償却不足の場合は、利益を水増ししているといった見方になります。 6.雑勘定 貸付金や仮払金の発生をチェックします。 中小企業・小規模事業者では役員報酬を払えなくて貸付金にするケースや、費用にできずに仮払金が残っているケースがよくあります。過剰な貸付金・仮払金は資産として認められません。 社長個人が使うお金を仮払金として処理している場合など、会社と個人のお金の区別が付いていない証拠であり問題です。
「事業計画書」を提出すると資金調達の成功率が上がる
決算書にプラスして「事業計画書」を持参すると効果的です。 事業計画書とは今後の事業をどのように運営していくのか、目標を示してそれを達成するための具体的なアクションを掲げた計画書のことです。いわば社長の頭のなかにある事業イメージをアウトプットしたものです。 社長のビジョンを明文化し社内で共有することで、社員たちが同じ目標に向かって一致団結できるメリットがあります。 また、銀行や投資家に提示することで「どのような事業をなんのために進めようとしているのか」「この事業によって何ができるか」をアピールするのに役立ちます。 事業の内容や目的は口頭で説明することもできますが時間がかかりますし、必要なことが伝わり切らないこともあります。融資担当者が知りたい内容を的確にまとめた事業計画書を提出できれば心証も良く、審査期間を短縮したり融資成功率を高めたりできるのです。 事業計画書は普通、銀行側が求めない限り自主的に提出することはありません。そもそも事業計画書を作成していない会社のほうが中小企業・小規模事業者では多いのです。また本来は3年計画や5年計画をつくっておくべきものですが、1年分しか作っていないケースもよくあります。 事業計画を立てていない、単年しか作っていないという場合、どうしても事業が行き当たりばったりになったり、目標や行動が分からないので社員が自己判断でバラバラに動いてしまったりしがちです。 今までは事業計画書がなくても日々の業務を積み重ねていくことでなんとかなっていた会社が多いのだろうと思います。世の中の景気が良かった時代はそれでも成長してこられました。 しかし、これからはそういう時代ではないので、戦略や計画がない会社については銀行は用心して審査が厳しくなります。 川居 宗則 中小企業診断士 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
川居 宗則