急速な円高・株安の連鎖はいったん落ち着きを取り戻すも不安定な動きは当分続く:米国経済が失速を免れるかが安定回復の鍵
市場の不安定な動きはなお続く
ただし、これで円高株安の流れに歯止めがかかったと考えるのは早計だろう。足もとでの円高・株安は日本銀行による金融緩和が生み出した「円安・株高バブル」の崩壊過程と考えることができるが、行き過ぎた分の調整が終わったとは言えないからだ。 株価とドル円レートは、2024年年初の水準まで戻り、2024年に生じた行き過ぎの調整は一巡した感もある。しかし、2023年に進んだ円安・株高の調整はまだ残っているのではないか。この先、2023年に生じた行き過ぎの調整がなされるとすれば、日経平均株価は2023年年初の2万6,000円程度まで17%程度の調整余地があることになる。ドル円レートは1ドル130円程度まで戻る余地があるとも考えられる。 米国経済が失速を免れるのであれば、そこまでの調整にはならないだろうが、米国経済が失速し、さらにそれに伴う金融面での問題が米国発で世界に広がる事態となれば、それ以上の調整となる可能性もあるだろう。 いずれにせよ、短期間で株価が急落した後は、投資家の心理的動揺はしばらく続き、金融市場が信頼を取り戻すまでには少なくとも数週間程度の時間を要するのではないか。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英