2024年ヒットアニメの鍵は“OP”にあり? 『マッシュル』から『ダンダダン』までを再評価
2024年も残すところあと数週間。エンタメにおける流行を振り返ってみると、NHK連続テレビ小説『虎に翼』や『不適切にもほどがある!』(TBS系)など、テレビドラマが目立っていたように思われる。 【写真】人気原作のアニメ化に成功した『ルックバック』 しかしその一方、アニメに関してもいくつもの話題作が生まれていた。今回はとくに大きなムーブメントを生んだものを取り上げ、人気の理由をまとめて紹介していこう。 ●『しかのこのこのここしたんたん』 まず2024年屈指の“バズアニメ”として外せないのが、7月より放送されていた夏アニメ『しかのこのこのここしたんたん』。キャッチーなフレーズを独特のリズムで繰り返すOPテーマ「シカ色デイズ」は、その中毒性の高さによって大きな話題を呼んだ。YouTubeに投稿されているノンクレジット映像は、現在3,000万回に迫る驚異の再生数を叩き出している。 また同楽曲はダンスを真似したくなるという部分も大きな魅力で、TikTokでは数多くの“踊ってみた”動画が出現。さらにアニメの公式TikTokでは振り付けを真似しやすい簡易版のダンス動画も投稿され、人気に拍車をかけた。そして日向坂46や櫻坂46などのアイドルからお笑い芸人のゴー☆ジャス、横浜DeNAベイスターズの選手たちに至るまで、幅広い著名人が参戦するほどのブームが巻き起こった。 ●『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』 振り返ってみると、2024年は音楽の力を利用したアニメが大きな注目を集める年だった。その象徴的な例が、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」がOPテーマに使用された『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』だ。 同アニメはTVアニメ『マッシュル-MASHLE-』の第2期として1月から3月にかけて放送された。元々海外人気も高い作品だったが、中毒性のあるビートと何度観ても飽きない斬新な映像が奇跡的な噛み合いを見せ、ビルボードチャートの「Global 200」では最高8位を記録(※)。日本の楽曲が同チャートでトップ10入りしたのはLiSAの「炎」、YOASOBIの「アイドル」に続く史上3曲目という快挙となった。 ●『ダンダダン』 同じくCreepy NutsをOPに起用した話題作として、10月から放送中の秋アニメ『ダンダダン』も挙げられる。同作はNetflixの週間グローバルランキング(テレビ・非英語部門)で2位を獲得するなど、海外ファンからも高い注目を集めているが、そこでOP曲「オトノケ」が果たした役割は決して無視できないだろう。 ●『ガールズバンドクライ』 主題歌だけでなく劇中でも音楽の力が発揮されていたのが、4月から6月にかけて放送された『ガールズバンドクライ』。同作は、オーディションで選ばれた楽器経験者が、声優に初挑戦するという斬新な手法で作られている。彼女たちが実際にバンドを組み、アニメ作中のバンド「トゲナシトゲアリ」と連動するという仕組みだ。 なおシリーズ構成・脚本を手掛けたのは、『けいおん!』や『ラブライブ!』シリーズでお馴染みの花田十輝。先の読めないドラマチックな展開が、生命力あふれるバンドの楽曲と上手く噛み合ったことで、思わぬ化学反応を生み出した。 そのパワーは国内のみならず海外にも伝わっており、とくに中国では熱狂的な人気を博している模様。12月14日に上海で開催された「トゲナシトゲアリ」の初海外ワンマンライブは、公演完売により追加公演が開催されたほどだ。 ●“ネット流行語”を席巻した『ブレバン』&『SEED FREEDOM』 とりわけネットで大きな盛り上がりを見せた作品としては、1月から放送された『勇気爆発バーンブレイバーン』が挙げられる。 硬派なリアルロボットものかと思わせつつ、ふたを開けてみれば人間のような人格を有する巨大ロボットが登場し、パイロットに対して偏執的な愛を向ける……という設定によってアニメファンの度肝を抜いた同作。主人公イサミ・アオの境遇が悲惨すぎることも話題を呼び、放送時には幾度もX上で「イサミかわいそう」というワードがトレンド入りしていた。 その人気の高さから、12月18日に発表された「ネット流行語100」では同作のタイトルが4位に入賞。「イサミ・アオ」や「ルイス・スミス」といったキャラクター名も100位以内にランクインする結果となった。 さらに「ネット流行語100」では、1月に公開された映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のタイトルが年間大賞を受賞。ほかにも「ズゴック」や「アスラン・ザラ」など、同作の関連ワードが10個以上もランクインした。しかも知る人ぞ知る人気キャラ「シホ・ハーネンフース」の名前まで入っていたので、その盛り上がりの熱量がよく分かる。 同作は約20年ぶりとなる『ガンダムSEED』シリーズの新作。2005年の『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』放送終了時からその制作を予告されていた劇場版が、ようやく日の目を見たという経緯なので、ファンのボルテージが高まったのも当然だろう。