【関東大震災から100年】東京の気温が45℃を超えた! ~猛火が迫る中での気象観測~
本震発生から約10時間後の局地天気図。不連続線(前線)南下後、関東平野では西風や北風のところが多くなった。 東京都心では、南から西風に変わり、やがて西北西から北北西となった。夜になっても余震が発生し、東京市内の火災の延焼は続いていた。震災翌年の報告書掲載図を参考に作成した。
■気象台に迫る猛火
関東大震災では、東京市内の134か所から火の手があがり、57か所についてはすぐに消し止められましたが、77か所については火元の周囲に火災が広がりました。中央気象台からは本震1時間後の段階で、西に2本、南に1本、北に数本の煙が立ち上っているのが確認されています。 火災は、南風にあおられて、北側へ延焼が広がっていったとみられます。夕方に不連続線が通過してからは、風向きが西に変わり、夜は北風になりました。延焼の方向も夕方には東向きになり、夜は南向きに変わったとみられます。 中央気象台の北側と南側には堀があって、木造家屋の密集地帯ではなかったのですが、午後10頃にはフランス大使館から火柱があがり、皇居のある南西側を除いた270度の範囲は猛火に包まれるような状況となっていたようです。 気象台構内にも火の粉が降り注ぐようになり、防火もむなしく午後11時50分には気象台の建物が燃え始めてしまいました。
地震によって発生した火災は、南風の強風にあおられて北側に広がり、風向きの変化とともに、夕方には東へ、夜は南へ延焼が広がったとみられる。「東京市火災動態地図」を参考に、火元と延焼方向を現在の地図上に作図した。青字は震災当時の建物の位置。
■気温上昇45℃を突破
中央気象台の観測によると、本震が発生した1日正午の気温は28.7℃でした。午後8時頃までの気温は28℃から30℃位で推移しています。 猛火が迫った午後11時頃からは気温が上がり始め、2日午前0時には37.1℃、2日午前1時には45.2℃まであがりました。百葉箱内の最高温度計は46.4℃を示していました(焼失した気象台建物からの距離は45.5m)。 同じ時間帯の品川での観測では25.~26℃であったことから、40℃を超える高温は火災の影響と考えられます。猛火の中で観測が続けられていたことに驚かされます。なお、気象統計上9月1日と2日の気温の値は欠測扱いとなっています。