“立冬”にシャキッ!冬の味覚・千枚漬、漬け込み本格化 「世界に誇る発酵食」京の老舗・大安
暦の上では冬が始まる「立冬」の11月7日、京都の冬の味覚「千枚漬」の漬け込みが本格化した。 【画像】今や他ではなかなか見られない「千枚漬け」手作りの工程 京都・大安 創業122年・京漬物の老舗「大安(だいやす)」本店に併設された工房(京都市東山区)で、熟練職人による作業が報道関係者に公開された。 千枚漬は、直径20センチ、重さ約2キロの京野菜「聖護院(しょうごいん)かぶら」を使用。法被姿の職人たちは「シュッ、シュッ」という音を響かせながら、かんなで薄く2.6ミリに削り、次々と樽に敷き詰める。 10月下旬から漬け込みを始め、一部が機械化されている工程を職人の手で行う様子は、すっかり冬の風物詩になった。 大安の千枚漬は、塩で3日間漬け込む「下漬け」の後、北海道産の昆布や秘伝の天然調味料で風味を加え、さらに2日間置く「上漬け」をする。 こうして伝統ある「漬け替え製法」を守り伝えている。冬の寒さでかぶらの甘みが増すため、京都特有の底冷えが始まる立冬前後に漬け込まれた千枚漬が、最も美味しいという。歳暮や迎春準備に向けた12月までが最盛期。シャキッとした食感と、なめらかな舌触りが特徴。 ■デリケートな”聖護院かぶら” 農家の努力、実を結ぶ 大安の大⻆安史・三代目社長は、ラジオ関西の取材に対し、「今年も猛暑の影響で、かぶらが育ちにくかったが、昨年に比べて雨量が増えたぶん、最悪の状態は免れた。かぶらは発芽から70~90日で生育するが、カンカン照りでは、すぐに溶けて(しおれて)しまう。雨が降らなければ発芽しない。もろに収穫量に影響が出る。かぶらの産地の出始めは、まず北海道の寒冷地、そして富山、最盛期に京都の丹波地方(京都府亀岡市)と移るが、いずれも気温が上がり、生育時期の差がなくなってしまったが、契約農家の皆さんの努力でここまできた。そして今、秋らしく気温も下がり、甘みを増した美味しいかぶらになった」と振り返る。 ■「腸活」に”tsukemono(漬物)”、発酵食品の魅力 そして、「『季節のものを食す』という日本人のアイデンティティを大切にしたい。漬物は先人の知恵が詰まったスーパーフード。いま注目されている『腸活』も、乳酸発酵食品である漬物が見直されるきっかけになった」と話す。 大⻆社長はまた、「海外の方々に、酒(Sake)と同じく、漬 物(Tsukemono)として認知度を上げたい。海外ではまだ、“ピクルス(Pickles)”としてしか知られていない。京漬物の魅力を伝えるためにも、今年も冬の千枚漬をお届けしたい」と話した。
ラジオ関西