「自分が真っ二つになった」声優・林原めぐみが苦手な歌手活動を33年も続ける理由
アンチからの手紙を読みすぎて“底”が抜けた
――林原さんがたくさんの作品でキャラクターを演じていた1990年代~2000年代は、まだSNSが普及していませんでした。それでも、昭和の『らんま1/2』の放送当初は、手紙で「女らんまの役はあなたじゃないほうがいい」と会ったこともない人から責められたこともあると聞きます。そんな攻撃に対してはどのように受け止めていましたか。 林原:アンチの方々からの手紙をあまりにたくさん読みすぎて、あるとき”底”が抜けました。他人からの言葉の攻撃が、どうでもよくなっちゃったんですね。「誰も私のことを傷つけることはできない。私のことを傷つけられるのは私だけ」と、悟りの境地までいってしまって(笑)。だって私はその人のこと知らないし、会ったことないし。「そういう考えもあるのね!」「それは申し訳ない」と思うことはありますが、言葉による攻撃で立ち直れないほど落ち込むことはもうないんですよね。致死量越えたのかも(笑)。 ゴリラがウォーっと雄たけびをあげながら拳で胸をたたく「ドラミング」って、群れを守るためにやっていることらしいんです。ボスゴリラのドラミングは警告や掲示として聞き逃してはいけないものですけど、「ボスになりたかったゴリラ」が谷に向かってウォーって叫んでいても、「勝手にやってろ」って感じですよね(笑)。 たとえマウントとって来たとしても「ボスになりたかったんだね、なれるといいね」とは思いますが、それに私が耳を貸すことは無いし、傷つくことはないですね。 それに、攻撃的だとしても「言葉を残す」って自分なりの存在証明の叫びだったりもすると思うんです。昔、「もう好きじゃなくなったので」というメッセージを添えて、ご丁寧にCDを返してくる子もいました。今思えば、その子は「ファンでいてよ」って言ってほしかったのかもしれません。わざわざ切手代を使って手間ひまかけて送っているわけですからね。 でも、すべての人が私のように考えられるわけじゃない。だから、「心の防具になったらいいな」という気持ちで、「強さの根幹は優しさなんだよ」ということをメッセージとして歌に込めたりもしています。