【賃金デジタル払い】制度解禁後の「実情」や「課題」とは?
2023年4月から、賃金デジタル払いの制度が解禁となり、開始に向けた準備が進められています。 しかし、現段階では普及しているとはいい難く、いくつかの問題が課題として残されています。そこで今回は、賃金デジタル払いの内容や課題について解説します。
賃金デジタル化とは?
まずは、賃金デジタル化について確認してみましょう。賃金デジタル化とは、給与を電子マネーといったデジタル上のお金で支払う制度のことです。労働基準法では、これまで賃金の支払い方法は、現金が基本でした。 しかし現代では、キャッシュレス決済の普及や送金手段の多様化によって、給与受け取りもデジタル払いを求めるニーズが広まっているようです。 賃金デジタル化では、労働者と使用者(会社側)の双方が同意した場合に、指定された資金移動業者の口座へ賃金の支払いが認められます。賃金デジタル化が可能になるまでのスケジュールは、以下の通りです。 ・資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請、厚生労働省で審査 ・大臣指定後、各事業場で労使協定を締結 ・労使協定締結後に個々の労働者に説明し、労働者が同意した場合には賃金のデジタル払い開始 2023年の4月より当制度が開始されましたが、審査や労使協定の締結、必要な手続きなどに時間がかかっているようです。
賃金デジタル化の課題
賃金デジタル化の制度は解禁されているものの、現時点では、各資金移動業者によるサービス開催に関する情報は発表されていないといいます。その背景としては、いくつかの課題が解決していないことが考えられます。 三菱総研DCS株式会社の「給与デジタルマネー払いに関する独自アンケート調査」では、賃金デジタル化の導入を早期に検討・開始する考えを持っている企業は、12.8%とのことです。 一方で、「いまのところ検討するつもりはないが、他社や社員の声などの状況によっては、検討するかもしれない」という声が57.4%で、最も多く聞かれました。さらに、賃金デジタル化におけるデメリットでは、以下の声が聞かれています。 ・1位:制度や賃金移動業者のサービスを理解しなければならない(65.1%) ・2位:賃金支払いの事務が増える(60.6%) ・3位:社員からの問い合わせが増える(50.6%) ・4位:賃金移動業者が破綻するリスク(48.4%) ・5位:賃金移動業者への手数料(43.3%) 上記のように、会社側にとっては、制度の理解が必要なことや手続きが増えることなどが原因で、導入に消極的な印象が見て取れます。