【ヴィクトリアマイル回顧】テンハッピーローズと津村明秀騎手が起こした波乱 ハイペースで目覚めたロベルトの血
出遅れが響いたナミュール
2着は4番人気フィアスプライド。流れを考えれば先行して2着は大健闘ともいえる。この馬の底力というか能力の高さを感じたのは2年前の秋風Sだった。中山のマイル戦で4コーナー13番手から直線一気を決めた。このレースは前後半800m45.7-47.6の超ハイペース。速い流れだからと追い込みが決まるわけではない。全体が速ければ当然、後ろの馬も追走で脚を使う。あの直線一気はまさにハイペースでの強さであり、その適性がGⅠで発揮された。姉ソフトフルートに似たところを感じる。牝馬だけにレース選択が難しく1800mを走らざるを得ない状況もあるが、ベストはマイル戦であることは間違いない。 3着マスクトディーヴァはソツなく、馬群のスキをついて抜け出そうとしたところを外からドゥアイズに封じられ、進路を切り返す場面があったのが痛かった。1番人気馬に自由自在に立ち回らせるわけにはいかない。そんな鮫島克駿騎手の気概に阻まれてしまった。しかしながら前哨戦で強く本番で足りないという現状はなんとかしたいところ。トライアルホースから一歩先に行けるか。今後は仕上げパターンやローテーションを陣営が工夫してくるだろう。 2番人気ナミュールは8着に敗れた。もちろんスタートでの遅れも敗因として大きい。古くは阪神JFから大一番での出遅れがある。競馬は最後の直線に至るまでの運びが大切とされる。最後は進路がなく力を全開に出せなかったが、これも序盤の出遅れが響いたことによるもの。やはりスタートで遅れるとたとえ後方でもいいポジションはとれない。 ナミュールはこのままいけば、外に出せないポジションに入らざるを得なかった。武豊騎手もそれを察知し、3コーナー手前であえて位置を下げ、最後は外へ出せるよう導いたようだが、後ろのルージュリナージュに外をとられてしまった。こうなれば馬群に一旦突っ込んで、下がってくる馬を待つしかない。ハイペースで外の馬の脚色がよく、結果的に進路をつくれなかった。テンハッピーローズとは対照的で、スタートからリズムをつくれなかった。敗因はそこだろう。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳