「かんだら負け」早口言葉てんこ盛りの新作ネタで、桂三実がNHK新人落語大賞
若手落語家の登竜門となっている「NHK新人落語大賞」が26日、東京・イイノホールで開かれ、新作落語に意欲的に取り組んでいる桂三実(さんみ)(桂文枝一門)が今年度の大賞を獲得した。日本人なら子どもから大人まで誰でも知っている「早口言葉」を盛り込んだ新作落語をひっさげ、テレビ生中継の高座で「かんだら負け」という賭けに挑んでの栄冠となった。(編集委員 千葉直樹)
1972年に始まった前身の「新人落語コンクール」以来、改称や内容の変更を経て続いてきた今年度の大会には東西で130人がエントリーした予選を勝ち上がった6人の噺家(はなしか)が出場した。出場資格はプロの落語家で東京は二ツ目、関西には「前座、二ツ目、真打ち」という制度が存在しないため、二ツ目と同程度の「入門15年未満」と決められている。
4番目に登場した三実は名古屋市出身の31歳。2012年に桂三枝(現・六代文枝)に入門した。三枝として取った最後の弟子となる。
この日の演目は自らが10年ほど前に創作した「早口言葉が邪魔をする」で、一番自信のあるネタだという。
「早口言葉を作りなさい」という小学生の子どもの国語の宿題を考えるためにファミリーレストランに行った父親が「隣の客はよく柿食う客だ」や「この竹垣に竹立てかけたのは~」を地で行く人たちに遭遇し、けがをした子どもを病院に迎えに行く道すがらも、次から次へと早口言葉が現実の状況となる展開に行く手を阻まれる。たくさんの早口言葉をてんこ盛りに詰め込んだ噺で会場の爆笑を呼んだ。
桂文珍、柳家権太楼、片岡鶴太郎ら5人の審査員が10点満点で採点し、6人の出場者の中で最高の48点を獲得した。
「老若男女、誰でもわかる早口言葉が、現実に起こったらどうやろな」と思ったのが創作のきっかけ。2年前の大会にもこのネタで臨んだが予選で敗退した。構成を練り直し、今年はラストチャンスのつもりでと励ましてくれた師匠文枝からアドバイスももらった。