「中国でラーメン屋やりたい」に田中角栄が激怒… 林家木久扇の“昭和過ぎる”陳情エピソード
「数字」を聞いて、態度を一変
――そりゃそうですよ、天下の田中角栄ですからね(笑)。 K:元総理大臣ですからね。でもあたくしもちょっと変わってまして、けっこううちの師匠に「てめえなんか出てけ!」って怒られたりね、けっこう年寄り慣れしてたんです。で、年寄りが怒っちゃったと思って、どうしようかなと思って。でも人間ってあまりずーっとは怒っていられないんですよね。そうこうしていると、言葉の継ぎ目を探すのに、田中先生が黙ったんです。 ――師匠は怒られてもすぐには帰らずその場にいたんですね。大概、そんなに怒られたらビビって帰っちゃいますけど。 K:怒っちゃってから沈黙があったので「田中先生、申し遅れましたが、ラーメン党というのは党員が1万名おります」 ――それ、先生が一番好きなやつです(笑)。 K:「そういうことぉ、早く言いなさいよぉッ! 物事は数字でしょ、数字! 1万名おるということは、1万票ということであります。あんたねぇ、スターの山口淑子、知ってますか?」 「はい、映画にも 出られてとても有名な方です」 「あれがね、うちにおるんですよ。その1万票、山口淑子にいただきたい」 ――当時議員をやっていましたからね。映画女優、李香蘭さんです。 K:「ラーメン党は私がまとめ役をやっておりますんで、必ず応援はして差し上げることができます!」そしたら田中角栄さんが「写真撮りますか」って……。 ――エッ、急に(笑)。
中国で受けた驚愕のVIP待遇
K:その時の写真があります。立ったのと座ったのと両方あるんですが、田中さんがポーズをつけたんです。こうやったほうがいいと。さっき怒っちゃったから、何かおもしろいことを言おうとしたのか、「この写真をね、向こうで見せると水戸黄門の印籠というほどではありませんがね、まあ~、効果があります」って。 ――国民にもわかりやすい、いい人ですね(笑)。やっぱり愛嬌のある方だったんですね。 K:それで中国に行った時、その写真を持って行ったんです。これでぼくの道を作ってくれました。 ――師匠がその時、48歳ですね。 K:そうですか。でも実際に中国に行ったら大変でした……。北京の空港に黒塗りが来ちゃってね。3台も「紅旗」っていう向こうの国産車が。それに乗ってラーメン店の候補地を3カ所回りました。 ――ものすごいVIP待遇じゃないですか! K:田中さんが間に入るとすごいんです。ぼくは立ち食いの14坪くらいの規模を考えていたんですが、田中さんが紹介してくださったんで、向こうが案内してくださった土地が2000坪。 ――ラーメン屋に2000坪(笑)。聞いたことがないです、そんな広いラーメン屋(笑)。