野党の主張する「政権交代で安保法廃止」は実現できる?
日本共産党の志位和夫委員長は10月15日会見し、政権交代による安全保障関連法廃止を軸にした連立政権「国民連合政府」を野党各党に呼びかけた。民主党の岡田克也代表は9月24日、安保関連法について「特に違憲の部分はたいへん問題。これを白紙に戻すことがわれわれの行動目標で、具体的には参院選、衆院選で結果を出して、政権交代することに尽きる。そのために全力を挙げていく」と語っており、野党各党は自民党から政権交代することで、安保関連法を白紙化すると主張している。 しかし、そもそも政権交代によって、一度決まった国家の重要な外交・安全保障政策を覆すことはできるのだろうか。
スペインでは政権交代でイラクから撤兵
海外をみると、スペインで2004年、政権交代によってイラク戦争からの撤兵が決定された例がある。「イラクからの撤兵」を公約に掲げたサパテロ書記長率いる社会労働党は2004年の総選挙で、親米姿勢のアスナール首相率いる国民党に勝利。サパテロ新首相は2004年5月、国民党が決定したイラク派兵を覆し、約1400人の兵力をイラクから撤退させた。 政権交代の背景には、選挙直前にマドリードで191人が死亡した列車爆破テロが起きたことも大きく影響したが、スペインの外交・政治に詳しい日本大学商学部の細田晴子准教授によると、もともと国連のお墨付きのないイラク戦争には反対の世論があり、国民の78%が撤退を支持していたという。 外交政策を大転換した場合、何が起きるのか。細田准教授は、スペインがイラクにおけるアメリカの「有志連合」から離脱したことで「アメリカとの2国間関係が悪化したが、(アメリカもスペインも)NATOの枠組みの中にいるので、安全保障の観点からは大きな影響はなかった。国際的にも、国連決議のないイラク戦争から撤退するという政策は支持された」と分析する。「スペインの外交政策は、伝統的に(アメリカとの関係を重視する)大西洋主義というより(欧州における関係を重視する)欧州主義を採ってきた。アスナール政権の親米姿勢の方が長い目で見れば特殊だった」のだという。