データセンター拡大、変電所新設に適地誘導 電力会社、各地で対応も
大量の電力を消費するデータセンターの需要拡大を受け、電力会社が変電所を新設したり、建設適地への立地を誘導したりといった方策を講じている。大規模な送配電網の増強による電力供給はコスト面から早期実現が難しいためだ。人工知能(AI)の普及もあって、関東と関西に集中するデータセンターは分散すると見込まれ、今後各地で対応を迫られる可能性がある。 千葉県白井市に2棟のデータセンターを構える通信大手インターネットイニシアティブ(東京)は、さらに1棟を増設する。3棟で最大一般家庭約1万7千軒分の電力が必要な見通しで、その調達が課題だ。棟の屋上で太陽光発電を始めたが、加藤佳則(かとう・よしのり)センター長は「消費電力の数%分しか発電できない」と話す。 白井市に隣接する印西市では、マンションや商業施設が立ち並ぶそばに窓のない巨大な建物が点在。米グーグルや大和ハウスなど国内外の企業がデータセンターを相次いで整備している。
都市近郊で通信環境が良いこの周辺は地盤が固く災害に強いため、集積が進んだ。一方、全国に先駆けて顕在化した問題が電力供給だった。 送配電会社の東京電力パワーグリッド(PG)は印西市に変電所を設け、6月に運転を始めた。データセンター向け契約の急増に伴う緊急措置で、送電ケーブルを通す地下トンネル工事に通常の4倍の掘削機を投入し、8年かかる工期を半分近くに短縮した。電力供給量を約1.5倍に増やし、今後も高める計画だ。 国内のデータセンターは現在、面積ベースで関東と関西に9割近くが集まる。東電PGと関西電力送配電は、電力供給に対応できる地域を案内する「ウエルカムゾーンマップ」を公開し、適地への誘電を進めている。 電力会社でつくる「電力広域的運営推進機関」の想定によると、2033年度には、データセンターや半導体工場の新増設分の需要電力量は2024年度に比べ11倍となる。 データセンターは、再生可能エネルギーの活用や広い土地を求めて地方にも分散していくとみられる。ソフトバンクが国内最大級のデータセンターを建てる北海道には、国内外から問い合わせが寄せられているという。
北海道電力の送配電子会社は「新たな電力需要は再エネの地産地消にもつながる」と歓迎する。送電設備増強や誘導マップ公開も検討している。 データセンター データ処理を目的にインターネットサーバーや通信機器を集約し、運用する施設。世界的に増え続けてきたデータ処理量は、人工知能(AI)技術の進化により一段と拡大している。これに伴い、機器の冷却などに使う電力の消費量も増加。地震や水害といった自然災害のリスクが小さい場所が立地に適しているとされる。