農産物よ、おまえもか―。野菜にも及び始めた値上げの波 価格高騰は勘弁、でも農家廃業も避けたいジレンマに消費者104人が出した答えは
円安を背景に輸入する原材料や燃料の価格が高騰してさまざまな日用品が値上がりする中、野菜や果物、食肉などの農産物にも価格上昇の波が及び始めた。資材費や輸送費、人件費などとともに、輸入に頼る肥料や飼料、農薬の価格も高くなっている。食卓に欠かせない農産物の値段について消費者がどのように感じているのかを探るべく、東京都内の商店街を訪れて声を集めた。答えてくれた104人からは、「懐が痛むのは勘弁してほしい、でも価格転嫁できずに割を食った農家が廃業するのも避けたい」とのジレンマが浮かび上がった。(共同通信=音光香菜美) 【写真】定年後、5人に1人は生活苦
▽キャベツにブロッコリー、トマトも値上がり アンケートは今年5月、東京都北区の十条銀座商店街と江東区の砂町銀座商店街、新宿区のあけぼのばし通り商店街などの古くからある商店街で実施した。 記者腕章を付けて街頭に立ち、タブレットを見せて質問に答えてもらった。テーマは農産物価格の現状認識を中心に据えた。 農林水産省の取材を担当する経済部の記者として、農業の窮状と価格転嫁の問題を消費者がどのように感じており、どのように行動するのか疑問を持ったことがきっかけだ。 ▽「高い」が64% 現在の農産物の価格水準をどう思うかの質問に対し、「高い」と答えたのは67人と全体の64%を占めた。「安い」と回答したのは6人にとどまった。 具体的にどの食品の価格が高いと感じているのかを聴いたところ、目立ったのはキャベツやブロッコリーだった。他にはレタス、トマト、ニンジン、キュウリ、大根、白菜も挙がった。
野菜以外でも、果物全般やオレンジジュース、食肉の値段が高いと指摘する声があった。私もスーパーで買い物中に、オレンジジュースの最近の著しい値上がりぶりが気になっていた。 回答者は70歳以上の方が多かったが、意欲的に対応してくれる20代の方々もいた。 年金生活者が多く、賃上げの恩恵を受けにくい高齢者ほど、食品の値上がりの打撃は大きい。ある80代女性は「毎日の食べ物は減らせないので、高くなると困る」と切々と訴えた。 20代の女性は「輸入が増えるのも問題だし、おいしいものを食べられる環境が続くよい方法があればいい」と真剣に考えてくれた。 ▽農家廃業容認の回答はわずか2人 続いて「農業者が現在の価格水準では事業を継続できない場合、どのような対策が妥当だと思うか」と尋ねた。 「継続できない業者が廃業する」という選択肢も設けたが、選んだのはわずか2人。農業は国の礎であるとともに安全保障の要であり、農家が撤退する事態になってはならないとの認識が大都市の東京でも根強いことが垣間見えた。