意外と知らない「Mozilla Firefox」が最近ブラウザとして人気が低迷している理由
「Mozilla Firefox」がそもそも人気を呼んだ背景
「Mozilla Firefox」の歴史は1998年、ウェブブラウザ「Netscape」のソースコードがオープンソースとして公開されたことから始まります。公開されたソースコードを元に、ウェブブラウザやメーラーなどのソフトウェアを開発する非営利法人として設立されたのが「Mozilla Foundation」です。その後はさまざまな変遷がありつつ、2002年に「Firefox」がリリースされます。 リリースから1年弱でダウンロード数は1億回を突破。高速なページ読み込みや、拡張機能(アドオン)によるカスタマイズ性の高さなどが評価され、多くのユーザーから評価されました。 ■アドオンの後方互換の切り捨てで一部ユーザーから反発を招く Firefoxはユーザーから大きな支持を集めましたが、00年代後半ごろから少しずつ人気に陰りが見え始めます。その要因の1つが「アドオン」。アドオンはFirefoxの魅力のひとつのはずでしたが、バージョンアップのたびにうまく動作しなくなるという問題が発生していました。 2017年末に行われた大規模なアップデートも、Firefoxの開発者コミュニティからの支持を低下させる原因になりました。これはアドオンの仕様を一新し、WebExtensionsに完全移行した上で、WebExtensionsベースではない既存アドオンの利用を不可とするものでした。 この移行はFirefoxが長年培ってきた豊富なアドオンの後方互換性を、極めて大きく切り捨てるものでした。いわば「レガシー」を手放す行為が、既存ユーザーの反発を招いた側面があります。 ■Firefox OSの失敗 Mozillaは2013年に独自のOSである「Firefox OS」をリリースしましたが、その失敗も、Firefoxの人気低下に影響を与えたと考えられます。Firefox OSはスマホ、タブレットへの搭載を念頭において開発されたOS。その最大の特徴は、Mozilla Firefoxと同じレンダリングエンジン「Gecko」の搭載です。 つまりFirefox OSはいわば「Linuxの上でFirefoxと同じレンダリングエンジンが動作するもの」です。分かりやすく言えば、今日のChromebookに近しい仕様のスマホです。ちなみに、Firefox OS向けにアプリを作るということは「Webアプリ」を作るのと限りなく近いです。 日本では2014年にKDDIから発売されたスマホ「Fx0」に搭載された「Firefox OS」ですが、上記のようなコンセプトの端末及びOSは「時代が早すぎた感」が否めません。 内蔵ウェブブラウザで実質的にすべてが完結するスマートフォンは、裏を返せばモバイル通信にすべてを依存しており、電波が不安定な環境ではできることが極めて限られます。スマホそのものの性能が今日の端末ほどには充実していない時代であり、なおかつ5G普及の遥か前の時代です。 筆者個人としてはFirefox OSの着想は時代を先取りしており、魅力的だと感じますが「2014年当時のスマホ」として魅力的だったかは別問題。Firefox OSの普及の失敗は、そのままFirefoxの「モバイル分野でのシェア獲得の失敗」に繋がっていきます。