”聖地”米ラスベガスでボクシングが無観客&PCR検査で再開「スパーを見ている感じがしたが生々しい音が聞こえ楽しめた」
”聖地”ラスベガスにボクシングが帰ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて米国のボクシングも全面停止していたが9日(日本時間10日)、米国ラスベガスのMGMグランド・カンファレンス・センター・グランド・ボールルームで無観客のテレビマッチとして、WBO世界フェザー級王者・シャクール・スティーブンソン(22、米国)対フェリックス・カラバロ(33、プエルトリコ)をメインにしたノンタイトル戦5試合が行われた。 「ボクシング・イズ・バック」と銘打ち、ボブ・アラム氏がCEOを務める大手プロモート会社のトップランクがスポーツ専門チャンネル「ESPN」とのタッグで実現したもの。MGM関係者やフロリダ州の感染対策の専門家と協議を重ね、新型コロナウイルスの感染予防対策として全選手、トレーナー、スタッフへのPCR検査を義務づけた。それだけで1大会あたり25000ドル(約270万円)以上の経費が必要だという。 本来ならばイベントは全6試合で女子スーパーフェザー級のミカエラ・メイヤー(29、米国)対ヘレン・ジョセフ(31、ナイジェリア)の試合も組まれていたが、メイヤーは事前のPCR検査で陽性反応が出たため隔離され試合は中止となった。新型コロナウイルスの症状のない無症状感染者であったが再検査などは行わず厳格に対処した。 またスティーブンソンのチーフトレーナーが、メイヤーのトレーナーも兼ねていたため、濃厚接触者と指定され、試合のセコンドから外された。 PCR検査を終えた選手らは食事や最終調整などの行動をホテル内に制限され、”密”を避けるため、ESPNの4人の解説者は、リモート出演。トップランクのスタッフも12人だけに絞られた。関係者は全員がマスクを着用。1試合が終わるごとにロープやコーナーなどリングがアルコール消毒された。
全米が注目したボクシング興行の再開は、フェザー級の6回戦でロンドン、リオ五輪の金メダリストであるロベイシ・ラミレス(26、キューバ)が、1ラウンド54秒で”瞬殺”TKO勝利するインパクトのある試合でスタート。メインのスティーブンソンは、世界ランク外のカラバロを1ラウンドからダウンを奪うなど圧倒、6ラウンドに左ボディ一発で無人の会場のキャンバスに沈めた。 リオ五輪銀メダリストのスティーブンソンは、ボブ・アラム氏が「サウスポーのフロイド・メイウェザー・ジュニアだ」と絶賛するホープで14連勝。 「私は彼を倒すためにここに来たんだ」 スティーブンソンは、そう胸を張ったが、ただでさえ格下だった相手は、スーパーマーケットの倉庫で働くフルタイムの仕事を切り上げ、約4週間前にあわてて準備を始めたばかり。練習の不十分な環境の中で、ボクシング興行を再開することの難しさを露呈した。 それでも海外メディアは3か月ぶりに再開された今回の興行を高く評価した。ヤフースポーツは、「準備された(感染予防の)ガイドラインはうまく機能したようで試合が行われた大広間は輝いて見えた。封切りイベントは上出来で、スティーブンソンが息を飲むパフォーマンスとともに記憶に残る夜とした。ボブ・アラムは、トップランク社がボクシングを戻すとの信念を失うことは決してなかった」と称賛。 豪州のニュースメディアnews.com.auは、「ボクシング界で最も才能のある若手選手の1人が、驚きの戦いぶりで相手を圧倒し、世界のボクシングファンたちを興奮させた。米国のボクシングが再開される中、すべての目線がスティーブンソンに向けられ、人気上昇中のスター選手は、その期待を裏切ることはなかった」と伝えた。